「ナイト列車 ドリーム号」~アーシャの力(6/8)

文・泉あおり  

「はぁ、はぁ」
あれから一時間、さすがに息があがってきた。
ふもとの山道をいくら歩けど、目の前の山にはまるで近づく気配がない。
「はぁ、もう、ダメかも」
山が巨大すぎて、気持ばかりが焦る。

もう止まろうかと、レン子は思った。
「ケダルナートへ行くには」
「へ?」
とつぜん背後で、声がした。
びっくりして、レン子はふりかえった。

「ケダルナート寺院へ行くには、ひたすらこの山道を歩くしかない。だろ、アーシャ?」
レン子に声をかけたのは、背の高い男だった。
まるで友達のような話しぶりだ。

(いつのまに、わたしの後ろに?)
その男は、枯葉色の衣を体に巻きつけていた。
いつか教科書で見た、行者のような出で立ちだった。

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員