「ナイト列車 ドリーム号」~ゲームマスター(1/8)

文・泉あおり  

矢田ヒロキは、小学6年生。身長は156センチで、体重は48キロの普通の男の子――顔と成績も、ごくごく平凡だ。
そんなありふれた生徒の一人、矢田ヒロキは、自分の家が普通じゃないと思っていた。

「はぁ、ダメだ。いくらやっても倒せない」
ヒロキはリビングで、大人気RPG「デーモンクエスト」に熱中。家にテレビはここだけで、プレイ中はいつも「主夫」のパパと一緒。

「サタン閣下が倒せないのか?」
ソファのパパが、新聞からテレビ画面に視線をうつす。
テレビ横の、ひとりがけのソファは、パパの特等席といっていい。
「倒せない・・・パパは仕事、見つかった?」
「おいおい、なんだよそれ」
容赦ないヒロキの一言に、ソファのパパがずっこけそうになる。
腰を上げて座り直ったパパが、頭をかく。

「ヒロキ、ゲームに集中しろよ。午後4時からの1時間は、ママから許してもらった貴重なゲームタイムだろ。俺なら、親なんかほっといて、手当たり次第にソフトを漁るぞ、ムフフ」
「そうしたいんだけど、今日はやーめた」
「珍しいな、おまえが苦戦してるなんて」
いさぎよくゲーム機の電源を落とすヒロキに、パパが目を丸くする。

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員