「ナイト列車 ドリーム号」~愛犬ペロとの記憶(6/7)

文・泉あおり  

草太のこぶしは、片桐の顔をよけ、砂場に深く埋まっていた。
ゆっくりと、目をつむった片桐がまぶたを開ける。
(あれ? 瞳が、キラキラしてる)
「フフフ、アハハ、アッハハハ!」
草太はキョトンとした。
草太の体の下で、片桐が身をよじって笑っているのだ。

「アハハ、ほんとに殴られるかと思ったよ」
「さっきの片桐くんは、ウソだったの?」
あお向けの片桐が、草太の背後に指をさす。
草太が体をねじって振りかえると、
「草ちゃんは、もう大丈夫だね」
と砂場で舌をだすペロと目があった。

「え! 今の声って、ペロっ?」
「そうだよ。ところで、もうどいてくれないかな? 草太って、意外と重いんだから」
息苦しそうに片桐が顔をしかめた。
草太はあわてて飛びのくと、
「強くなったね、草ちゃん」
と今度ははっきりとペロの声が聞こえた。

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員