ことばのつけものやさん 2/5

文・中村文人   絵・堀江篤史

「おい、リス! どこにいってやがった」

つけものを食べて元気が出たと思ったリスくんですが、イノシシ店長のこわい顔を見ると、やっぱりおどおどしてしまいます。

「おい、リス。かつおぶしの注文はどうした!」

「ち、注文は、あ、明日でもいいと・・・」

「オレが聞きたいのは、注文をしたのか、まだなのかだ。どっちなんだ。はっきりいえ!」

店長は、リスくんをにらみつけました。

「あ、あの、あの・・・」

「もう、いい! おまえみたいなやつがいると、ラーメンのスープがまずくなる!」

イノシシ店長は、まないたをたたきました。

「あ、あんまりだあ」

リスくんは、店をとびだしていきました。

「おい、リス! どこにいってやがった」

「ヤギさん、ヤギさーん」

リスくんは目に涙をいっぱいためて、ヤギさんの前に立っていました。

「おや、リスくん。あの浅づけでは、あまりききめがなかったみたいじゃのう」

「うん、ぼく、いいかえせなかった。うえーん」

「おやおや、泣くんじゃない、泣くんじゃないって。もう一度この袋に口をあててごらん」

「店長、それはいいすぎですぅ」

茶色の袋はさっきのように、少しだけふくらみました。

「では、白のぬかでいくかのう」

シャカシャカ、シャカシャカ、シャカシャカ、シャカシャカ、シャカシャカ。

ヤギさんは、さっきより念入りにふっています。

袋から白いたくあんが一切れでてきました。

「さあ、お食べ。これで、はっきりしたことばで、はなせるようになれるはずじゃ」

「ありがとう、ヤギさん」

ポリポリ、ポリポリ。すると、リスくんのしっぽが、またぴんとしてきました。

「よーし、今度こそ、店長にガツンというぞ!」

「その調子、その調子。がんばるんじゃよ。そうそう、この袋をもう一枚もっていきなさい。なおしたいことばがあれば、またおいで」

ヤギさんは、リスくんを見送りました。

「おい、リス。この忙しいのに、なにをしてた」

イノシシ店長は、リスくんをにらみつけました。

「は、はい、すみませんでした」

「おい、リス! 明日の予約は何人だ」

「は、はい、あの〜、確かあ」

「すぐに答えられないのか! おまえは」

店長はよほど虫のいどころが悪かったのでしょう。「この、のろま」「なにやってんだ!」と店長は、リスくんにあたりちらしました。

いっしょに働いているシカさん、タヌキさんは、おこられないようテキパキ、ハキハキ。でもリスくんはおどおどして、ドジばかり。イノシシ店長は、そんなリスくんをきらいなのかもしれません。

――よーし、みてろ。つけものパワーだ!

リスくんは、ヤギさんのことばを思い出し、店長の前に立ちました。

「店長! ぼくだけにどうしてそんなきついいい方をするんですか? ぼくだって、いっしょうけんめい仕事をしているんですよ」

シカさんとタヌキさんは、その声にふりかえりました。リスくんがイノシシ店長に、はじめてはっきりと意見をいったからです。

「・・・・・・」

店長は、何もいえないようにみえました。

ところが、それはほんのいっしゅんでした。そのあとは「なんだとー、なまいきな」「オレのいい方が気に入らなければ、さっさとこの店から出ていけ」と、さっきよりきついイノシシ店長のことばが、リスくんにとんできます。

「うえ〜ん、ひどいよ〜」

リスくんは、目をまっかにして、またお店をとびだしてしまいました。

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