ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(8/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

穴があったら、入りたい。
けれど、ないから、あたしは、なるべく、顔を伏せ、ソーメンをすする。
最悪だ。さらしてしまった、醜態を。
ついつい戦闘態勢に入ってしまったが、よくよく考えればわかることだ。
あたしは、ここで宿泊させてもらっている身、そのお宅で、だれかと出会ったとしたら、家の人だと考えるのが普通だ、フツーは。

しかも、ここは、お盆の花盛り町大字細八字猪甲乙、だれが出てきても、それがフツーの状態なんだから。
しかも、しかも、向こうからしたら、怪しいのは、侵入者は、あたしの方だ。
もう、白状するのも嫌だけど、あたしが、いくら、寝起きが悪いとしても、ひどすぎる展開だ。
もしも、時間が巻き戻せたら・・・。

「何時くらいかな」
「10時くらいだな」
「ああ、親切な方、ありがとうございます」
「そんな時間を教えたくらいで、礼にはおよびません」
「いえいえ、そんな。お礼にスイカでもいかがでしょうか?」
「いただきましょう。そして、スイカを食べながら、語り合いましょう」
「はい、そうしましょう。あたし、電気、点けますね」
「いやいや、ぼくが点けてあげるよ」
「重ね重ねのご親切、ありがとうございます。あっ、あなたは、佐熊山賢作さん・・・」
なんてロマンチックな会話が、頭に浮かぶ。

でも、時間は、巻き戻ることなく、進む。
覆水盆に返らず、だ。

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朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。