わすれんぼうのオオカミ、けっこんする(4/4)

文と絵・山庭さくら

まいにち、七ひきもの子どものせわは、たいへんです。つかれもあってか、ある日、メイヤがびょうきになってしまいました。
ガブリは、『今日こそ、ヤギをおなかいっぱいたべてやるぞ』とおもいながらも、子どもたちにごはんをつくっているうちに、そのことをわすれてしまいます。
それに、ごはんをいっしょにたべているうちに、おなかもいっぱいになってしまうのでした。
メイヤがよくなるまで、ガブリはてつやでかんびょうしました。
メイヤがねこんで三日目のよなかのこと。おなかのすいたガブリは、こんやこそ、メイヤをたべようと、大きく口をあけました。
オオカミガブリ4場面
そのとき、ゆめをみていたメイヤは、ねごとをいいました。
「ガブリさん。ほら、あそこにもピンクのお花がさいているわ。きれいねえ。ここでおべんとうをたべましょうか」
そうして、にっこりほほえんだのです。
ガブリはおもわずあけている口をとじました。
あけがた、メイヤが目をさますと、ガブリがベッドのよこのいすにすわって、うつらうつらしているのが目に入りました。
《私のかんびょうまで、こんなにいっしょうけんめいしてくれる人なんて、ほかにはいないわ》
そうおもいながら、ガブリのねがおを見つめました。
《でも、ガブリさんはオオカミ・・・》
そんなことをおもっているうちに、メイヤはまたねむってしまいました。

おひるすぎのことです。ねつも下がったメイヤは、ようふくにきがえました。
「もうすこし、ねてたほうがいいんじゃ」
「もう、だいじょうぶ。ガブリさん、ほんとうにかんびょうありがとう」
じっとガブリを見つめていたメイヤは、おもいきってガブリにいいました。
「もしも、もしもなんですけど、よかったら子どもたちのおとうさんになってやってくれませんか」
ガブリはいっしゅんぽかんとしました。
「ヤッター、ガブリさんがおとうさんだ!」
ガブリは、子どもたちの大よろこびするこえにおもわず
「はい、ぜひ!」と、へんじしていました。
それからというもの、ガブリは、メイヤと七ひきの子ヤギたちと、しあわせにくらしました。
いまでもヤギをたべたくなることのあるガブリですが、そのたびに、それをわすれてしまうできごとがおこるみたいですよ。

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山庭さくら について

山庭さくら(やまにわ さくら) 愛媛県出身。大好きな童話作家は浜田広助。 図書館での読み聞かせ、児童養護施設でのボランティア、大学病院の小児科でのボランティアでの読み聞かせを行ってきて、童話や絵本の大切さを実感。 2006年に出版した『ウータンタンのおはなし』は、大分県の夏休み課題図書に選ばれる。 その後、依頼で『不思議なコウモリ』や『シッポでさよなら』などを創作。これまで作った作品は20以上。読み終えた後に、心がほっこりする童話を書きつづけている。 HP:幸せつなぎスト