ジロとドロとヴァイオリン(4/7)

文と絵・すむらけんじ

朝のさんぽからもどってくると、ちょうどボクの食事のじゅんびができたばかりだった。
「ドロがこないうちにはやく食べてしまうのよ。ジロ、わかった?」
りつ子さんは言い、出かけてしまった。
ボクが食べようとしたときだ。・・・ふとふりかえってみると、ああ、やっぱり。ドロが怖い顔をしてボクの鼻すれすれに顔を近づけていたので、震え上がってしまった。
「ほらね、君のために手をつけないでとっておいたんだよ。どうぞ」
ボクが身をひく前に、ドロはもうガツガツと食べはじめた。
ガツガツ、ガツガツ、すさまじい。かいぶつのようだ。
ボクは柱のかげから、息をひそめてながめているだけだった。
そして、半分くらい食べてしまったころ・・・・。
ジロとドロ4キィ、キィ、キィーと、ステファノのヴァイオリンがサロンからきこえてきたのだ。あのモーツアルトのれんしゅう曲が。
おやっ? ドロのガツガツがぴたりと止まった。酔ったように、頭を上げてきき耳をたてているようだった。
ドドソソララソー、ファファミミレレー・・・
ドロはいきなりドアの方に向かってとっしんした。そして、食べたものをゲーゲーはきちらしたのだった。
ヴァイオリンの音色がキィ、キィ、キィーと、まだきこえてくる。
ドロはくるったように体をよじって、走り去っていったのだった。

1 / 11

すむらけんじ について

山口県出身。東京芸大工芸科卒業後、富士フイルム宣伝部に勤務。その後イタリアへ。ミラノで広告、パッケージののためのイラストレイター(フリー)として現在にいたる。 趣味は旅行、クラシック音楽、とくにオペラ。ミラノで4匹目の猫を飼っている。自分の描いたイラストを入れて、猫をテーマに短い物語や生活のことを書きたい。