タロウごいのぼうけん(1/3)

文・山庭さくら  

5月になると、いちのせ川には、どんぐりようちえんのこどもたちがつくった、たくさんのこいのぼりがおよぎます。
チューリップやくるま、女の子のわらったかお。いろいろなもようがあって、そばをとおる人は、それを見るのがたのしみでした。
タロウごい1場面CTMその中に、いっぴきだけ、こわいかいじゅうのえがかいてあるこいのぼりがありました。
たろうのつくったタロウごいです。
たろうは、たんじょう日にお父さんにかってもらった、お気に入りのかいじゅうのえをかいたのです。
お天気のいい日には、こいのぼりたちは、ゆったりと気もちよさそうに、ゆーらゆーらとおよぎます。
でもタロウごいだけは
「ガーオガオガオ、ガガッガ、ゴー。おいらはつよいぞ、ガーオガオ」
といいながら、ほかのコイノボリをおしのけながら、かぜにはためきます。
つよくていじわるなタロウごいは、みんなから、こわがられていました。
タロウごいは、いつも下をながれる川をのぞきこみながら、あのさかなたちのように、じゆうにおよぎまわりたいなとおもっていました。

ある、かぜのつよい日でした。
タロウごいをむすんでいたひもがちぎれ、タロウごいは、ひらひらと川におちて行きました。
「これで、オレもあちこち、好きなところに行けるぞ!」
タロウごいは、大よろこびです。
「なんだかへんなにおいがするなあ」
川におちてみると、ゴミがたくさんおちているし、くさいにおいまでします。
それでもタロウごいは
「ガーオガオガオ、ガガッガ、ゴー。おいらは強いぞ、ガーオガオ」
と、いばりながらおよいでいましたが、そのうちに、だんだんさびしくなってきました。
いままで、たくさんのこいのぼりのなかまたちといっしょだったのに、いまはひとりぼっちです。
ともだちがほしくなったタロウごいは、むこうからきた、小さな赤いさかなにあいさつしました。
「こんにちは、おいら、タロウごい」
けれども、タロウごいの、大きなあんぐりあいた口を見て、たべられるとおもった小さなさかなは、へんじもしないで、あわててにげて行きました。
ちょっとかなしくなったタロウごいでしたが、どこにだって行けるのは、気もちがいいなあ、とのんびりおよいでいました。

すると、とつぜん、「たすけてぇ」というこえがきこえてきました。
見ると、さっきあいさつをした、小さな赤いさかなが、大きなくろいさかなに、おいかけられています。
「たいへんだ!ガオガオガオー! オレはかいじゅうざかなだぞ! よわいものいじめしてるのは、だれだぁ」
くろいさかなは、タロウごいのおなかの、こわいかいじゅうのえを見て、びっくりしてにげて行きました。
「たすけてくれてありがとう。あなたって見た目はこわいけど、やさしいのね」
赤いさかなは、おれいをいうと、どこかにおよいで行ってしまいました。
タロウごいは、これまで、ほめられたことなんてありませんでしたので、ちょっとはずかしくなりました。
「えへへ」
タロウごいはちょっとてれて、また、およぎはじめました。

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山庭さくら について

山庭さくら(やまにわ さくら) 愛媛県出身。大好きな童話作家は浜田広助。 図書館での読み聞かせ、児童養護施設でのボランティア、大学病院の小児科でのボランティアでの読み聞かせを行ってきて、童話や絵本の大切さを実感。 2006年に出版した『ウータンタンのおはなし』は、大分県の夏休み課題図書に選ばれる。 その後、依頼で『不思議なコウモリ』や『シッポでさよなら』などを創作。これまで作った作品は20以上。読み終えた後に、心がほっこりする童話を書きつづけている。 HP:幸せつなぎスト