ハトのオイボレ、最後の冒険(7/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

「あらら、だんまりかね? 失礼な!」
だまっていたって、やはり、おこらせました。
「あたしたちは、遠い、寒い国から、はるばる、海をこえ、山をこえ、何日もかけて、ここまで旅して来たんだ。おまえのような、人間の食べ物をあさり、苦労もせずに、のうのうと暮らしている鳥とはちがうんだよ。ここまで来るのだって、とちゅう、どれだけの仲間を失ったことか!このあたりはハンターがいないから、油断して、低めに飛んだのが間ちがいだったよ。おまえのせいで、あやうく、もう一人、若い子を失うところさ!」
「私たちが、苦労もせずに、のうのうと暮らしているだって!」
マガモのひどい言葉に、オイボレはカッとなって、急に、力が出ました。

「そっちこそ失礼な! おまえたちはおまえたちで飛べばいいじゃないか! こっちのじゃまこそ、しないでほしいもんだ!」
オイボレは、マガモの群れからはなれようとしましたが、運の悪いことに、マガモの行き先は、オイボレの目指している方向と、ぴったり、重なっていました。

マママガモは、ちっぽけなハトが堂々と言い返したので、ちょっと、びっくりしたようでしたが、
「何も、おまえのじゃまをしようっていうんじゃないよ。ただ、一言、あやまってくれればいいんだ。そんなにいきり立つことはないじゃないか」
と、ちっとも、はなれて行こうとしません。

どうやら、オイボレがふつうのハトの飛ばないコースを飛んでいることに、とても、興味を持ったようすなのです。仕方なく、うるさいママを追いはらおうと、
「蔵王に・・・、太陽王に会いに行くところなんだ」
と、手短かに、事情を話しました。

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伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井県福井市在住。 『指輪物語』大好きのトールキアン。その上にトレッキー(「スター・トレック」ファン)でシャーロキアン(「シャーロック・ホームズ」ファン)と、世界3大オタクをカバーしている。

伊藤耀 について

(いとう ひかる)1992年福井県福井市生まれ。仁愛大学人間学部心理学科卒。いつもはウサギばかり描いているが、ときどき、母親の童話に挿絵を描いている。福井市在住。創作工房伽藍で勉強中。