プンプン右の木どうなった(1/3)

文・山庭さくら   絵・岩崎陽子

森の入口に、しいの木が二本はえていました。
えだをいっぱいにひろげ、たくさんのはっぱをつけている、その木たちは、子どもたち四人が手をつないで、ようやくまわりをかこむことができるほど、大きな木でした。
見た目はふたごかとおもうほど、よくにた二本の木でしたが、左の木は、かぜにさわさわゆれると、まるでわらっているかのように見えるのに、右の木は、かぜにざわざわゆれて、なんだかおこっているように見えるのでした。

きゅうな雨がふったときに、ちかくをとおりがかった人たちは、その木たちの下にかけこみます。
「こんなにも、きゅうに雨がふるなんておもってもみなかったよ。カサをもってこなかったから、ここで雨やどりさせてもらおう。そのうち雨もやむだろう」
左の木は、下で雨やどりをしている人が、すこしでもぬれないように、うんとえだをのばしてあげます。
「木のおかげでたすかったな」
人びとは木を見上げてほほえみ、さっていきました。
左の木は、それをきいて、とてもうれしくなりました。
それなのに、右の木は
「ぼくのねっこにのっかるなんて、なんてしつれいなやつ。さっさと、どこかへ行ってくれよ」
とブツブツいうのでした。

なつのあつい日には、木の下はとてもすずしく、ちかくをとおる人たちは、そこで休んでいきます。
「きょうも、なんてあついんだろう。さて、この木の下で、ひと休みさせてもらうことにしよう」
木のねもとで、人びとはハンカチを出して、あせをふきながらすずみます。
「おかげでゆっくり休めたよ。木の下は、なんて気もちがいいんだろう。かぜも、木のえだをとおると、こんなにすずしくなるんだな。さて、そろそろ行くとするか」
そんな人びとに、左の木は「気をつけていってらっしゃい」と、見おくります。
でも、右の木は、そんなことをおもうどころか「ああ、やっと行ってくれたよ」と、ほっとするのでした。

Sぷんぷん右の木1あきになると、二本の木には、たくさんのみがつきます。
ときどき、小学生の子どもたちが、どんぐりのみをひろいにやってきます。
「うわぁ、こんなにいっぱいどんぐりがおちてるよ!」
「ぼく、これで、コマをつくろう」
「わたしはブローチをつくろうかしら」
森は、子どもたちのこえでにぎやかです。
「それにしても、どっちの木も大きくてりっぱねえ」
女の子たちが口ぐちにほめるのをきいて、さすがの右の木も、そのときだけは、うれしそうにはっぱをゆするのでした。

ときどき、小とりたちがとんできて、二本の木のえだにとまることがあります。
左の木は、そんな小とりたちから、とおくのはなしをきくのが、なによりのたのしみでした。
「ぼくはうごけないから、きみたちの見てきたことをはなしておくれよ」
すると、小とりたちは、おてらで白いヘビが見つかって、人げんたちが、かみさまのおつかいだといって大さわぎしたことや、カラスのすの中は、ピカピカひかるものでいっぱいなことなどをはなしてくれるのでした。
左の木は、そんな小とりのはなしをきいて、びっくりしたり、大わらいしたり。
でも、右の木は
「まったく、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ、うるさいなあ。ひるねもできやしない」
そういってもんくをいうので、いつからか、小とりたちは左の木にしか、とまらなくなりました。
右の木は、それをさびしいとおもうどころか、せいせいしたとおもうのでした。

1 / 11

山庭さくら について

山庭さくら(やまにわ さくら) 愛媛県出身。大好きな童話作家は浜田広助。 図書館での読み聞かせ、児童養護施設でのボランティア、大学病院の小児科でのボランティアでの読み聞かせを行ってきて、童話や絵本の大切さを実感。 2006年に出版した『ウータンタンのおはなし』は、大分県の夏休み課題図書に選ばれる。 その後、依頼で『不思議なコウモリ』や『シッポでさよなら』などを創作。これまで作った作品は20以上。読み終えた後に、心がほっこりする童話を書きつづけている。 HP:幸せつなぎスト

岩崎陽子 について

イラストレーター。東京デザイナー学院絵本コース卒業。 シール制作会社勤務後、フリーのイラストレーターとして児童向け雑誌や書籍を中心に制作活動しています。ゆくゆくは、絵本を作りたいと思い日々奮闘しています。趣味はパン屋さんめぐり。大好きなパンをほおばりながら新作を構想しています。