プンプン右の木どうなった(3/3)

文・山庭さくら   絵・岩崎陽子

あるおてんきのいい、はるのことでした。
ようちえんくらいの男の子が、おかあさんと手をつないでやってきました。
「ちかくにこんなステキなこうえんがあってよかったわねえ。あら、あそこにきれいなさくらがさいているわよ。」
えだをひろげているさくらの木はまんかいで、ときどき、うすももいろの花びらが、かぜにまっています。
「あっ、さくらの下にベンチがある!」
男の子は、おかあさんの手をふりほどき、ベンチにむかってはしり出しました。
そうして、右のベンチにすわると
「わぁい、一とうしょう! おかあさんも早く、早く!」
と手まねきしました。
右のベンチは、きゅうなできごとにびっくりしました。
なぜって、左のベンチにだれもすわっていないときに、じぶんにすわってもらうのは、はん年ぶりのことでしたから。
ぷんぷん右の木 ベンチ
「うわぁ、おいしいそう!」
おかあさんのつくってくれたおべんとうをひろげて、男の子はとってもうれしそうです。
そのとき、からあげの上に、ひらひらと、さくらの花びらが二まい、まいおりました。
「おかあさん、見て見て。おにくに、おかおができちゃった」
右のベンチには、おかあさんと男の子のしあわせがつたわってきます。

(これが、左のベンチくんがいってたことなんだな。ぼくは、どうしていままでそれに気がつかなかったんだろう。いつまでも、この二人のえがおが見ていたいなあ。ぼくは、なんてしあわせなんだろう)
「ベンチさん、ありがとう! またくるね」
男の子はかえるときに、右のベンチにいいました。
右のベンチはそれをきいて、おもわずにっこりほほえみました。なんだかこころの中が、ぽかぽかします。
それからというもの、どちらのベンチにも、たくさんの人がすわるようになりました。
右のベンチは、左のベンチとよくおしゃべりするようになり、まい日がたのしくなりました。

もう、さびしくなんてありません。
きょうもこうえんには、みんなのえがおがあふれています。
「こうちゃんって、おだんごつくるのじょうずねえ」
ひっこしてきたばかりだった、あの男の子は、みじかいかみの女の子と、すなばでなかよくおだんごをつくっています。
一人ぼっちだったおじいさんにも、ともだちができ、うれしそうにおしゃべりをしています。

ベンチたちは、ニコニコとみんなのようすをみまもっています。
まいばん、みんながかえったあとのこうえんで、二つのベンチは、きょう見たしあせなできごとをはなします。
「ピンクのふくの女の子、きょう、はじめてあるいたんだよ!」
「ママ、大よろこびしてたね」
「おじいちゃん、おともだちがたくさんできてよかったね」
「今では、おじいちゃん、こうえんのにんきものだね」
はなしながらだんだんねむくなっていくベンチたちの、さいごのことばはいつもおなじです。
「あしたもはれるといいね」
「うん。またみんなのえがおがみたいからね」

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山庭さくら について

山庭さくら(やまにわ さくら) 愛媛県出身。大好きな童話作家は浜田広助。 図書館での読み聞かせ、児童養護施設でのボランティア、大学病院の小児科でのボランティアでの読み聞かせを行ってきて、童話や絵本の大切さを実感。 2006年に出版した『ウータンタンのおはなし』は、大分県の夏休み課題図書に選ばれる。 その後、依頼で『不思議なコウモリ』や『シッポでさよなら』などを創作。これまで作った作品は20以上。読み終えた後に、心がほっこりする童話を書きつづけている。 HP:幸せつなぎスト

岩崎陽子 について

イラストレーター。東京デザイナー学院絵本コース卒業。 シール制作会社勤務後、フリーのイラストレーターとして児童向け雑誌や書籍を中心に制作活動しています。ゆくゆくは、絵本を作りたいと思い日々奮闘しています。趣味はパン屋さんめぐり。大好きなパンをほおばりながら新作を構想しています。