ロイちゃん(1/6)

文・泉 あおり  

「たすけてっ、だれかたすけてぇ」
「へ、声?」
とつぜんひめいが聞こえて、スズ子はハッと立ちどまった。
朝の通学路は、ランドセルをしょった生徒でいっぱいだった。

「へ、なに? どこどこ?」
けれど、ほかのみんなはひめいに気がついていないようだった。
「たすけてぇぇ」
「やっぱり、声がする。ど、どこですかー?」
「ここよ、ここ。ガードレールの、下ーっ」
「へええ!」
その声に、いっしゅんスズ子はテレビ番組のドッキリかと思った。

「ええ、どうしよう。声はやっぱり、自分にしか聞こえていないみたいだし・・・うーん、まさかねぇ」
ほんとうにガードレールの下なら、ちっちゃな妖精(ようせい)だってことになる。
「きのう、算数ドリルやりすぎたかなぁ」
「ブツブツ言ってないで、はやく! はやくしないと、あたし、車にひかれちゃうぅ」
「きっと、わたしはつかれてるんだぁ。あーあー」
やっぱりこわかったから、スズ子はカラスのように鳴いた。
こんなことなら、クラスのだれかのイタズラであってほしい。
「もーお。わたし、そっちけいは、にがてなのにぃ」
「ほら、はやくしなさいってぇ」
しかたなく、ビクビクしながらも、スズ子はガードレールの下を見まわした。

「そう。ほら、ここよ」
ガードレールの下には、スマホがせをむけて落っこちていた。
「さっさとひろってぇ」
「へえええ! うそだぁ。スマホって、ベラベラしゃべるっけ?」
「うそじゃないわ。ほら、はやくぅっ!」
なんど耳をうたがっても、スズ子に話しかけてくるのはそのスマホからだった。
「あー、やっぱりつかれてるんだ。社会のテストも、60点だったからなぁ。あーあー」
けっきょくまよったあげく、スズ子はスマホに手をのばした。
はじめてのスマホに、すこしだけきょうみがあったのだ。
ドキドキ。
「うわ、かるーい。スマホって、こんななんだぁ」
おそるおそるスマホをひろったスズ子は、ビクビクワクワクしながら画面をのぞいた。

1 / 3123

泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員