ロイちゃん(2/6)

文・泉 あおり  

「井上スズ子、赤井さん、アンドーロイコ。名前のじゅんばんだから、スズちゃんの前があたしの席ね!」
「へ、つくえの中じゃ、いやぁ?」
「いやよ、いやいやっ。だって、あたしも生徒だもん」
「だよねぇ。でも、つくえがねぇ・・・」
赤井さんとスズ子の席のあいだには、もうスペースはなかった。
「ないなら作って。じゃないと、泣くわよっ!」
「ひっ、ええ、へぇー」

けさのばく音を思いだすと、スズ子はあわてて前にいる赤井さんのかたをたたいた。
「ごめん。イスのうしろに、これ置かしてもらってもぉ?」
「わっ、スマホだ! わたし、はじめてなの!」
「だよねぇ。でも、先生にはシーで。じつは、家からいつ電話があるかわかんなくってぇ」
「もっ、もちろん! 休み時間に、見せてもらっていい?」
「おっけー」
けっきょく、わけのわからない理由を言って、赤井さんに協力してもらった。
「これ、つかって」
「紙コップ? ほー、天才だねぇ」
スズ子はさっそくハリ金で、理科の実験でつかった紙コップを、赤井さんのイスのせなかにとりつけた。

「これであたしも、小学四年生ね!」
「一寸法師みたいでわるいけど、がまんしてねぇ」
おかげで、紙コップがロイちゃんの席になった。
つぎの社会の時間、スズ子はつくえで、あてないでぇ、と強くねんじていた。
けれど、きん肉ムキムキの先生が、
「じゃあ、井上! この県の名前はなんだ?」
とみんなの前でスズ子をあてたのだ。
「へえぇ、ねんじてると、あたるよねぇ」
ビクビク。
「ほら、立ってこたえろ!」
「へえ、へええぇ・・・」
ガタッ。
「へええ・・・うーん。ひ、ひぃ」
クラスのみんなに見つめられ、スズ子は問題をわすれてしまった。

「そのぉ・・・ひぃ、ヒトデぇみたいなぁ・・・県ですかぁ」
「井上、ヒトデなんて県はないぞ、わっはっは!」
ぎゃははは!
スズ子のこたえに、クラスのみんなが大わらいした。
「まあ、おもしろいから正かいだ! よし、すわれ」
ガタッ。
「はー、たすかったぁ・・・んー? そうでもないかぁ」
ドキドキドキ。
いすにすわったスズ子は、しばらく手でむねをおさえていた。
すると、とつぜん赤井さんのイスが、パッと光りはじめたのだ。
「はー、いやな予感がするなぁ」
どうやら、ねていたロイちゃんが、目をさましたようだった。
「気にしない、気にしない、あーあー」
スズ子は集中して、プリントの北海道をながめた。

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員