世界樹と呼ばれた樹(1/6)

文・ナリムネタカシ  

スゥは、森の奥のこかげで目覚めたばかりの木の芽です。
その日、スゥが昼寝をしていると、
「ねぇ、わたし、みんなとはぐれちゃったの。他のみんな、一体どこにいっちゃったんだろう。見かけなかった?」
と、話しかけられました。
世界樹1話「うん、知らないよ」
気持ちよく寝ていたスゥは、まぶたを閉じたまま答えました。
「そう・・・。困ったなぁ。どうしたらいいのかしら・・・」
今にも泣き出しそうなその声が気になり、目をこすりながらゆっくり開けて見上げると、まるで龍のひげのようにに長い尾と、黄金色の羽、そして、吸い込まれそうなほどにすんだ瞳をした小鳥が一羽、自分を見つめていました。
スゥは息を飲み、思わず口を開きました。
「・・・きっと、みんな戻ってくるよ。だから、それまでここでいっしょに待ってようよ」
と。
スゥの返事に、小鳥は少しだけ安心した様子でした。
「じゃあ・・・しばらくここにいさせてね」
「僕は スゥ・ヤヌール・ド・エドエンシルス。言いにくいから、スゥでいいよ」
「うん。ありがとう、スゥ。わたしは龍髭鳥(りゅうひげどり)のライラ。よろしくね」

それからしばらくの間、ライラは仲間を待っていましたが、いつまでたっても戻ってはきません。
でも、隣にスゥがいるので、もう心細くはありませんでした。
空の飛び方を知らないライラは、小川まで歩き、くちばしで水を運んでスゥに与えてくれました。
ある時、スゥは小さな赤い実をひとつ実らせました。彼は水を運んでくれるお礼にライラにそれをあげると、
「スゥの実、とっても甘くて美味しい」
と、とても喜んでくれました。
初めのうち、なかなかすぐには実りませんでしたが、小指の先程の小さな赤い実がひとつできるたびにライラに与え、それをほおばるライラは、いつもうれしそうにさえずりました。
スゥはライラの歌をきくと、とても幸せな気持ちになり、この時間がずっと続いてほしいと思っていました。
気がつくと、スゥはライラよりも少しだけ大きくなりました。

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ナリムネタカシ について

1978年生まれ。東京都出身。働きながら、子供向けのお話を創作しています。