太陽がほしかった王様(5/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

このときです。ふと、太陽の音が止み、あたりは、しいんと、静かになりました。
「いったい、どうしたことだ・・・」
水兵たちは手を止めて、太陽に目をやりました。驚いたことに、太陽は、あみの目から、ふんわり、にじみ出て、どんどん、ふくらんで行きます。そのやわらかい光で、海も、空も、見渡す限り、きらきらと、赤く、まぶしくそまっています。なのに、なぜか、少しも熱くありません。それどころか、すがすがしい風さえ、吹いて来ます。

「ああ、何と美しいのだろう・・・」
提督や水兵たちは、あみもオールもすっかり忘れて、涙を浮かべ、ただ、うっとりと見とれていました。それがマガタの船隊の最後でした。
すとんと夕陽が落ちた時、「夕べの神殿」の人々が見たものは、夜空いっぱいの星の下を、たった一人の水兵が、けんめいに、泳いでくる姿でした。

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伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井県福井市在住。 『指輪物語』大好きのトールキアン。その上にトレッキー(「スター・トレック」ファン)でシャーロキアン(「シャーロック・ホームズ」ファン)と、世界3大オタクをカバーしている。

伊藤耀 について

(いとう ひかる)1992年福井県福井市生まれ。仁愛大学人間学部心理学科卒。いつもはウサギばかり描いているが、ときどき、母親の童話に挿絵を描いている。福井市在住。創作工房伽藍で勉強中。