弁慶とガリ勉(1/7)

文・池田幸生  

真一は、小学5年生です。
毎朝、家から学校までの通学路を通っています。
真一が通学路で見上げる空には、青空はなく、うす灰色のよどんだ色が広がるばかりで、その空を、エサをさがすカラスが鳴きながら飛ぶ姿が見えるだけでした。

真一の小学校は、都会に建つマンションに囲まれた中にありました。
校庭は小さく、土ではなくて人工的に固められたものでした。
学校の入口には、監視カメラや非常ブザーが付けられていて、登校時間や下校時間には先生たちが、それ以外の時間には警備員の人たちが学校の外や中を見回っていました。

「変な時代になったもんだ・・・」
お父さんは、真一に言いました。
「お父さんの子どもの頃は、子どもはもっと自由で、校庭だってでこぼこの土そのまんまさ。第一なんだいあの警備員は? 過保護すぎるんじゃないのかい?」

「しょうがないじゃない。今は子どもの数だって減少してるんだし、子どもをねらった犯罪だって多いんだから・・・。それに校庭だって、土地がないのよ」
お母さんにたしなめられると、お父さんは黙って真一に舌を出し、おどけるようにして自分のしょさいへと入ってしまいました。

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池田幸生 について

(いけだ ゆきお)東京都墨田区出身。防衛省陸上自衛隊を退官して現在区役所に勤務。慶應義塾大学文学部を通信教育で卒業。高校時代から童話を趣味で執筆、いつか童話作家になりたいと勉強中。