弁慶とガリ勉(3/7)

文・池田幸生  

「四番、ファースト、磯田!」
呼ばれて打席に立った弁慶は、すごい目をしてピッチャーをにらみます。
そして、相手の投げた球を打ち返すと、外野の後ろまで飛ばしました。

「すげえ!」
皆驚きました。
弁慶は、とても運動ができたのです。
でも、その分勉強は、まったくできませんでした。
足し算も九九もダメでした。

「あいつ運動はすごいけど、ホント勉強ができないな・・・」
クラスの連中は、かげ口を言いました。

弁慶は、大きなマンションの外を走っている国道を越えた、そのまた向こうの小さな木造のアパートに住んでいました。
弁慶には、お父さんがいませんでしたが、母親と妹の3人で暮らしていました。
母親は、家族3人を養うために働いていました。
弁慶も妹のめんどうを見ては、買物や家事をこなしていました。

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池田幸生 について

(いけだ ゆきお)東京都墨田区出身。防衛省陸上自衛隊を退官して現在区役所に勤務。慶應義塾大学文学部を通信教育で卒業。高校時代から童話を趣味で執筆、いつか童話作家になりたいと勉強中。