弁慶とガリ勉(7/7)

文・池田幸生  

真一は、はなれていく弁慶の背中を見ていました。
大きく深呼吸すると、バットを握り直し、再び打席に立ちました。
ピッチャーをにらむガリ勉の目は、弁慶の目になっていました。

相手ピッチャーは、ガリ勉のふんいきが急に変わったことに気づきました。
そして、ようすを見ようと一球はずしました。
第三球。
ボール。
外角にはずれました。

真一は、ボールがよく見えていることに気づきました。
第四球。
投げました。
きわどいコースでしたが、真一に迷いはありませんでした。
真一は、その球を思い切りたたき返しました。
たたかれたボールは、外野の間を勢いよく抜けました。

「オオ―ッッ!!」
打球のゆくえを見て、観客たちは大きな歓声をあげました。
球はどんどん転がり、ランナーは次々とホームに入ってきました。
そして、ボールを止めたころには、打った真一は3塁まで走っていました。
「走れ!! ガリ勉!!」
さけぶ弁慶の声に、真一は3塁ベースをけりました。
ボールが内野に中継されます。
必死に走る真一。
ショートからキャッチャーにボールが帰ってきます。

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池田幸生 について

(いけだ ゆきお)東京都墨田区出身。防衛省陸上自衛隊を退官して現在区役所に勤務。慶應義塾大学文学部を通信教育で卒業。高校時代から童話を趣味で執筆、いつか童話作家になりたいと勉強中。