心の温度がほっこりあがる

エイモスさんがかぜをひくと書影エイモスさんが  かぜを  ひくと
フィリップ・C ・ステッド 文
エリン・E・ ステッド 絵
青山 南 訳
光村教育図書

パジャマのような、黄色のストライプの表紙が目を惹き付ける。
そこにいるのは瞳の優しい大きなゾウ、キョトンとした愛くるしい表情のペンギン、そしてゾウを見上げる鼻を赤くしたエイモスさん。「かぜをひくと」とタイトルにあるくらいだから、鼻をかみすぎたのだろうか。
おや、赤い風船の先には小さなネズミもいるではないか。ネズミもまた、怖がる様子もなくゾウを見上げている。
ほのぼの、そしてゆっくりとした時間がながれているのが見てとれる。
なんだか心が温かくなるのを感じながら、表紙をめくる。

エイモスさんは動物園ではたらくおじいさん。
動物たちをこよなく愛し、そしてまた、動物たちもエイモスさんを慕っている。
エイモスさんの人生は、きっと動物たちなしでは語れないのだろう。
動物たちと築いてきた信頼関係は、きっと長い長い日々のなかで培われたものなのだろう。
きっと上手くいかなかった日もあるに違いない。それでもエイモスさんは動物たちと向き合ってきたのだろう-。
エイモスさんの丁寧な1日の様子から、そんなことに思いを巡らせる。

繊細なタッチのイラストのおかげで、自然と文章も丁寧に読んでいく。
どこか懐かしく、そして素朴な印象の絵は、エイモスさんの世界を更に魅力的に広げている。
特に動物たちの優しい瞳は、ふと心を留められてしまうものがある。
細かな表情がよく表現されていて、「◯◯な顔をしているね」「どんなことを思っているのかな」などと、子どもと話しながら読んでいくのも楽しいだろう。

読んでいくうちに、動物たちと同様、いつの間にかエイモスさんのことを慕っている自分に気づく。こんな動物園のおじいさんが本当にいたらな~。
エイモスさんがかぜで苦しんでいるのには、大丈夫かな、とこちらも心配になってくる。仕事をやすんでしまった悲しげなエイモスさんに、大好きな動物たちに会えないのは寂しいですね、と心の中で話しかける。
特にエイモスさんは一人で暮らしているようだから、なおさら心配だ。
しかし、そんな心配は無用だったことを知る。
エイモスさんの周りには、エイモスさんが知る以上に、愛が溢れていたのだから。

愛情を、相手を慈しむ心を、全体を通して伝えてくれる。
それは明確な言葉ではないが、絵と文からなる絵本ならではの伝え方だ。
この絵本を読み終わったとき、絵本を読み始める前との心の温度差を感じてほしい。
きっと、あなたの心は、ほんわか温かくなっているはずである。

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かなこ すぷらうと について

埼玉県生まれ。社会人になった後、1年間暮らしたNewZealandでたくさんの自然に触れたことをきっかけに、絵を描くことを志す。帰国後は絵画教室に通い、児童デイサービスで働きながら絵本づくりやイラスト制作を続ける。空気の匂いや温度のある絵を描けるように勉強中。現在はアメリカ在住。 Twitter : kanacosprout