未来人がやってきた(1/5)

文・泉あおり  

「あーあ。ぼくはずっとゲームをしていたいのに」
つくえにひろげた算数のドリルを見て、コウタはため息をついた。

「宿題がおわるまで、ゲームはダメよ!」
おなかが出たクルクルパーマのお母さんは、コウタにとってオニのような存在だ。だから、お母さんの言いつけだけはゼッタイなのだ。
「このままだと、今日もゲームができないぞ」
コウタは大あくびをして鼻をほじった。
コウタは勉強が大っきらいな小学四年生。
とくぎといえば、鼻くそ鉄ぽうの名人といったくらいだ。

「つくえに本をのせろ!」
ピンッ、ピンッ、ピンッ!
「やった、2発命中」
「すごいぜ、コータ」
「きゃあっ、赤井さんのランドセルに!」
国語、算数、社会の教科書を的にして、なるべく遠くから鼻くそを命中させる。ときにはハズレもするが、日に日にうでがあがっていくから、コウタはクラスのにんき者だった。

「今日はコウタが、新きろくにちょうせんだ」
「よし、本をのせろ!」
ビシッ!
「やったあ」
その的中りつはたいしたもので、いちど、一番うしろの席から黒板にのせた教科書に命中させたこともある。
「うそ、理科の本がふっとんだ」
「きゃあっ、中井さんのスカートが!」
ワイワイ、ガヤガヤ!
おまけにはかい力もすごかった。
今ではコウタの鼻くそが、すさまじい風とともに教室をかけぬけて、クラスのみんなを毎日こうふんさせているのだ。

そんなコウタには、大きなゆめがあった。
「あーあ。ずっとゲームがしていたい。だれか、ぼくのゆめをかなえてくれる人はいないかな? あー、ずっとゲームをしていたい」

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。