消しゴムくん、旅にでる!(10/10)

文・泉あおり  

カキカキ、ゴシゴシ・・・ゴシゴシゴシッ。
「んー、ここのツノは、もうちょっとトガッてるほうが、カッコいいかなあ?」
その夜、ケイタくんはまたロボファイターのマンガをかきはじめました。
ヒーローがだいすきなケイタくんは、なんどもロボファイターのツノをかきなおしては、ぼくを片ときも離すことなく、消しゴムを使ってくれたのです。

「うん。やっぱり、コイツのツノはトガッてるほうが、ゼッタイにカッコいい」
ゴシゴシゴシ・・・カキカキ、ゴシゴシ。
ケイタくんは、ものすごいいきおいで、ぼくは使ってヒーローの絵をかきなおしました。
もうすぐ消えるとわかったけど、ぼくはちっともこわくはなかったのです。
ぼくの心が、ぼくは世界一幸せな消しゴムなのだ、といったホントの気もちを、ずっとぼくに語り聞かせてくれていたからでした。
「あーでもなぁ、ホントはもういちどだけ、ピン子とジョーとあそびたかったなぁ・・・」
ただ、もう教室で友だちの二人とあそべないと思うと、それだけがぼくにとって心のこりだったのです。

ゴシゴシゴシ。
「よし、いいぞ。コイツが・・・えっと、町を破壊するから・・・えっと」
ゴシゴシゴシ、ゴシゴシ。
「それで、ついに町にロボファイターがやってきて――」
ゴシゴシゴシ、カキカキ、ゴシゴシ。
けっきょく、ケイタくんの創作は、一晩中つづいたようでした。
消しゴムの体はドンドンとへっていって、ぼくはもう、とちゅうから意識がなくなってしまいました。
だからぼくは自分が完全に消えてしまうまえに、
「ケイタくん、ありがとう。ぼくはキミに使ってもらえて、幸せだったよ」
と、もうろうとする意識のなかで、そっとケイタくんに話しかけたのでした。

「・・・あれれ? いま、ダレかしゃべった? んー、そんなわけないよね。よーし、もう今日は、寝ないでがんばるぞ!」
カキカキ、ゴシゴシゴシ・・・。
――ケイタくん、さようなら!

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員