消しゴムくん、旅にでる!(1/10)

文・泉あおり  

ポンッ、コロコロコロ!
「あれ、おかしいな」
「どうしたの、ケイタくん?」
「ゆかに落とした消しゴム、見つからないんだ」
「また? ケイタくん、よくつくえのもの落とすよね。でも、あたしもずっと不思議だったんだ。消しゴムってゆかに落とすと、どうしてか見つからないんだよね」
もちぬしのふたりは、つくえで首をかしげていました。

「アハハハ・・・あー、ダメダメ。消しゴムが、もちぬしを笑っちゃダメだよ・・・」
ぼくは消しゴムのゴー。そしてここは、小学3年生の教室です。
ゆかに落ちたばっかりで、ぼくはいま、かるいめまいと笑いと戦いながら、ジッとまっているのでした。

バッババッ!
「やったあ、やっと手足がはえたぞ!」
そうです、これがみんなのしらない、文房具の秘密なのです。
ぼくたちはなんと、ゆかに落ちると手足がはえてしまうのです。
「あーあ、はやくピン子とジョーにも、手足がはえないかなぁ?」
さっそく教室のすみまで逃げてくると、まだつくえのうえにいる、えんぴつとじょうぎをぼくは見つめました。

ポンッ、カッチャン! カンッ、コロコロコロ!
するとようやく、ぼくの友だちふたりが、ゆかに落ちるのが見えました。
「うそ、あたしのじょうぎは?」
「ない、どこにもないっ。ぼくのえんぴつ、いま落としたばっかなのに!」
バッババッ!
すぐに手足がはえたえんぴつとじょうぎを見て、ぼくはホッとしました。
これでなんとか、今日も友だちふたりと、あそぶことができそうです。

「もっと早く落としてよねえ、まったくぅ。まあいいわ、じゃあ、いくわよ」
さっそくゆかに落ちたえんぴつのピン子は、つくえをはなれようとして、立ち止まってしまいました。
となりでじょうぎのジョーが、ジタバタとしていたからです。
「ひ、ひい、た、たすけてくれっ」
まだ起きあがれないジョーを見て、ピン子がためいきをつきました。
「もう、なんで自分でたてないのよぉ。ほらっ、はやくぅ」
ピン子が、ジョーの手を引っぱっりはじめました。

「ひ、ひい、いっつもわるいな! なんせおれは、手足がみじかいもんで、自分で起きあがれないんだよぉ」
「うーん、うーん」
「よっこらしょっ! ふうー、たすかったぜ」
「あー、おもかった。それじゃあ、いくわよ」
「よし、まかせとけ! にっげろー」
タタタタッ。
ジョーとピン子はおたがいを見てうなずくと、はえたばかりの手足を大きくふって、教室のすみへと走っていきました。

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員