消しゴムくん、旅にでる!(4/10)

文・泉あおり  

冒険にでる約束をしてから、3日と1時間がたちました。
三人がふたたび教室でそろうのに、しばらく時間がかかってしまったのです。
土曜日と日曜日をはさんだせいもありましたが、なかなかもちぬしがじょうぎとえんぴつを落としてはくれなかったのでした。
そのあいだに、ぼくはもう3回も手足がはえていたのです。

「あー、はやくピン子とジョーも、ゆかに落っこちてくれないかなぁ」
一人だったぼくは、その日がくることを、どれだけ待ちわびたことでしょう。
ポンッ、カッチャン! ポンッ、コロコロコロ!
待ちに待った、冒険の日が、やっとやってきたようです。

「あ、またゴーの顔が小さくなったぞ、がっはは!」
ひさしぶりに会ったというのに、じょうぎのジョーは、いつものようにぼくの顔を見て大笑いしたのでした。
「あらヤダ。また顔が小さくなったんじゃない」
えんぴつのピン子はいつものように、顔についた消しゴムのカスを手ではらってくれました。ぼくを見つめてくるピン子は、いつものように不安げだったのです。
どうやら、ぼくの顔が小さくなることが、心配でたまらないようでした。

「じつはね、もうすぐロボファイターが完成しそうなんだ」
だからぼくは、ピン子とジョーにまた顔が小さくなったわけを話したのです。
まいばんつくえにむかってマンガをかく、がんばっているケイタくんのことを、二人にちゃんと伝えたのでした。

「ロボファイターは、するどいツノがトレードマークの、すっごくつよいロボットなんだよ。ロボファイターが、町を壊すモンスターを、どんどんやっつけていくんだ」
「ねえ、ゴー。その、ロボファイターのことなんだけど・・・それって、なんなの?」
「うーんとね。かんたんに言うと、ケイタくんが思いついた、最高のヒーローだよ」
「ふーん。でもねぇ・・・」
ぼくのもちぬしのケイタくんは、ヒーローが大すきなのです。
たたかうヒーローにはツノがあるもんだ、といつかお父さんから聞いたケイタくんは、みんなをまもる、強くてやさしいロボファイターを思いついたのでした。

「ガッチリしたオレンジ色のボディに、せなかには空をとぶジェットエンジン。口はないけど目はクリンとして、心はとってもやさしいロボットなんだ」
そして必殺わざは、胸からはっしゃする、ビーム光線。
「だから、モンスターなんて、イチコロなんだよ」
「だからって、ちょっと使いすぎなんじゃない?」
ぼくが楽しそうに言えば言うほど、ピン子は肩をすくめていきました。

ピン子は心配そうな目をして、ぼくの顔についた消しゴムのカスを、また手ではらってくれたのです。
ケイタくんがどんどん消しゴムを使うことが、どうしても心配なようでした。
ぼくは、どうすればいいのかわからなくなりました。
ケイタくんが必死でマンガをかいているすがたを見ると、ぼくはドンドン自分を使ってもらって、もっともっと応援したいとさえ思っています。
けれど、それだとピン子とジョーは、不安になってしまうようでした――。

「そうだ! はやく、はやく外の世界にいきたいね!」
考えたあげく、ぼくにいまできることは、話題をかえることだと思ったのです。
「ねえ、ピン子、まだなの?」
するとピン子は、くつばこのうえから、窓の外をながめました。

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員