消しゴムくん、旅にでる!(6/10)

文・泉あおり  

「あれ、キミはたしか消しゴムの、ゴー?」
「ケイタ、くん・・・ケイタくんっ!」
とつぜんケイタくんの声が聞こえて、ぼくはハッと目をさましました。
あたりを見まわすと、いつものケイタくんの勉強づくえのうえだったのです。
ぼくはいつもの場所に、コロンと転がっていて、そばにはシャープペンシルに三角じょうぎ、そしてロボファイターのマンガをかいたノートもおいてありました。

「そっか、ぼくは寝てしまってたんだ・・・。ゴメンね、ケイタくん。せっかくマンガをかいてたのに」
ぼくはすぐに、消しゴムを使ってもらおうと、自分の体をケイタくんにさしだしました。
「ちがうんだ、ゴー」
「え?」
ケイタくんは、なぜかぼくの体をつかもうとはしませんでした。
するとケイタくんは、どこかざんねんそうな顔を近づけてきたのです。

「なんていうか、その・・・この子が、この子が新しい消しゴムなんだ」
「新しい、消しゴム?」
ケイタくんの手のひらには、見たこともないピンクの棒のようなものがありました。
「細長くて、ジャマにならない消しゴム。ふで箱のなかだって、もう消しゴムのカスがたまらないようになってるんだよ」
それはピンクのつつになっていて、さきをクルクルと回すと、棒のなかから細長い消しゴムが顔をだす、そんな最新のものだったのです。

「だから、その、もうゴーのことは必要ないんだ」
「必要・・・ない?」
必要ない、必要ない、必要ない、とケイタくんのその言葉は、ぼくの頭のなかでなんどもグルグルとかけめぐっていったのです。
――それって、もうケイタくんと会えなくなるってこと?
「ぼ、ぼぼ、ぼくはまだ、がんばれるよっ!」
「そうじゃなくって。ゴメンね、ゴー」
「け、ケイタくんっ」
そうしてぼくは、ようやく気がついたのでした。
ケイタくんは、ぼくのことがキライになったのです。

――ぼくがケイタくんにないしょで、外の世界に飛びだしてしまったから。
――ぼくがケイタくんにはひみつで、かってに冒険にいってしまったから。

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員