消しゴムくん、旅にでる!(7/10)

文・泉あおり  

野犬から逃げてきたぼくたち三人は、夜の教室にジッと身をひそめていました。
いつもの三年生の教室は、だれもいなくて、とっても不気味だったのです。
「なんか、シーンとしてるね」
「そんなものよ。いちど小太郎があたしを忘れて帰ってしまって、ひとりでここで一夜をすごしたことがあるけどね」
ピン子をのぞいて、ぼくとジョーは、夜の教室なんてはじめてのことでした。
まだ胸のあたりが、ドキドキと音をたてています。
野犬に夜の教室、気がつくとぼくの冒険は、思っていた世界とはまったくちがう場所へとたどりついていたのでした。

「ね、ねえ、ピン子、ジョー。こ、ここだったら、もう安全だよね?」
「バカね、ゴーったら。野犬だって、さすがに教室まではおそってはこないわよ。ところで、ジョーは新聞紙を見つけてくれた?」
マッチ箱に腰をおろしたピン子は、教室をウロウロしているジョーに話しかけました。
夜の教室へと逃げかえると、ピン子はもちぬしのつくえをあさって、小太郎さんが家からもちだしてきたという、マッチ箱を見つけてきたのでした。
「あとは、なにか燃やすものさえあれば、明るくなるのよね」
そこへ、サクラさんの引きだしをあさっていたジョーが、
「やった! 習字の半紙の切れはしが、山のようにはいってるぜ、がっはは!」
と火をおこすための、紙を見つけてくれたのです。

「よし、じゃあくつばこのまえで、いまからマッチをするわよ」
ピン子はぼくに、くつばこのうえのペットボトルを指をさしてみせました。
「いちおう、花の水やりようのペットボトルがあるから、まんがいち、火事がおきたらアレで火に水をかけるのよ。いいわね、ゴー」
「うん。じゃあぼくは、植木鉢のおさらをもってくるね」
くつばこのなかに、よびの鉢ざらがあることを、ぼくはしっていたのです。
このなかで紙を燃やせば、教室で火をおこしてもだいじょうぶだと考えたのでした。

カッカッカッ、ボっ、ボォ・・・ボオオォォォ。
三人で力をあわせて火をおこすと、暗かった教室がしだいに明るくなりました。
「はー、よかったぁ・・・これでもう、だいじょうぶだね」
ホッとすると、ぼくはきゅうにねむたくなってしまったのです。
「うふふ、つかれたでしょ? ゴーにしたら、この冒険は、はじめてのことだらけだったものね」
ねむたくなって目をこすると、ピン子がぼくの顔をやさしくなでてくれました。
それにつられてか、だんだんと、ぼくのまぶたは重たくなっていきました。
「ゴー、ねむっていいんだぞ。冒険のつづきは、またあしただ、がっはは!」
ウトウトウト。
「なんか、いろいろあって・・・ねむたくなっちゃったよ・・・ゴメンね、ジョー、ピン子・・・さきに、ぼく・・・ねよう、かな」
「おやすみ、ゴー」
「おう、グッスリな、がっはは!」
ホントはもうクタクタで、ぼくは限界すんぜんだったのです。
二人の笑顔に見つめられながら、ぼくはあっというまに、ふかいふかいねむりの中へとはいっていったのでした。

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 ふと子供の本を書こうと思いつき、会社を飛びだしました。 今は時間を見つけては、童話と児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員