絵本作家になるための3つの実践:文章編

絵本のおはなし作家になるために、私がこれまで実践してきた3つの事柄のうち、前回は好きな絵本を解体し、構造を知ることをおすすめしました。今回は絵本を構成する大きな要素である文章に着目したいと思います。

◆まるごと書き写してみよう

●タイトルから最後の一文字まで
絵本作家になるための文章編今回もまた好きな絵本、とりわけ自分が書きたい世界に近い絵本を準備してみてください。そしてそれを手書きなり、パソコンでタイトルから最後の一文字まですべて自分の手で書き写してみましょう。その時に場面ごとに番号をふっておきます。

私は編集者時代、作家の先生からいただいた原稿(そのころは手書きも多かった)を印刷会社に渡す文字原稿にするために、ワープロで打ちなおしていました。すると、その作業過程で、作家のいいたかったことや、句読点の位置や、改行に込められた思いなども汲み取ることができました。

また書き写すことで、すぐれた絵本がどのような起承転結で構成されているのか学ぶことができます。とりわけ「転」がそのおはなしをおもしろくする肝要なところなので、そこに着目をしています。
その絵本を参考にする――あくまでも参考ですが、読者の子どもたちがどこでドキドキして、どこでほっとするのか、これは自分の文章創作の上で大いに役に立つでしょう。

●絵本の言葉はおしゃべりすぎない方がよい
絵本だけでなく童話もですが、ストーリーのおもしろさと言葉の選び方は両方大切です。童話が絵がないことを前提にいかに言葉を紡いで、重ねて、描写していくか、に注力することに対して、絵本はいかに絵に多くをゆだね、あずけ、画家に遊んでもらうか、ということが重要になってきます。

難しいのは絵のない原稿の段階で自分の考えた世界をどのように表現するかです。私はまず言葉を重ねて、とにかく書いてみます。つぎに削る作業に入ります。ラフをざっと書いてみて、絵で語られるであろう部分は削ります。そのラフを編集者や画家に見せることはまれなので、補足として伝えたいことは本文とは区別して「※~」の文章として小さめに添えています。また編集者によっては補足の文章も必要ないとおっしゃる方もいます。
文章をけずることは最初は勇気がいることです。ですが、それは言葉を捨てるのではなく、選び抜くということです。思い切って取り組んでみてください。

●詩を書くように言葉を選ぶ
またある編集者には「絵本の言葉は詩をつむぐように書いてください」と言われました。詩の言葉は多くを語らない、読み手に多くをゆだねた言葉です。
またリズムのある聞いていて心地よいものであり、絵本の文章と共通するものです。なかなか難しいことではありますが、座右の銘として忘れないようにしています。

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新井悦子 について

長崎県在住。保育絵本キンダーブック2(フレーベル館)の生活コーナーのお話を4年間執筆。絵本に『きょうはとくべつなひ』 (教育画劇)、『いたいのいたいのとんでゆけ』 (鈴木出版)、『だいすきのしるし』 (岩崎書店)、訳本に『中国のおはなしシリーズ』(Benesse)、紙芝居に『ちんちろりんおばけ』『なすおばけ』など(教育画劇)。創作の他に英語教材のストーリー制作、ワークブックの企画など。地元では子どもの本に関するボランティアグループおはなしマルシェに所属し、「させぼふるさと紙芝居」として地元の昔話『じんねみどん』『三川内の化け猫騒動』など現在5巻を制作。日本児童文芸家協会会員。