自分の才能を自分で見つけることの大切さ

ミシンのうた書影ミシンのうた
こみねゆら 作・絵
講談社

この絵本は、近所の図書館で出合った本です。夜も一つのテーマになっているようで、暗い中に、明るい色彩で、ワクワクするもの、希望となるものが絵本の各ページの絵に隠されているように思いました。2014年に誕生したばかりですが、100年ほど前の古き良きヨーロッパの雰囲気が漂う絵と色彩にとても惹かれました。

主人公は「わたし」と記されており、名前は出てきません。主人公の女の子が、洋裁店での住込みの見習い期間を思い返すような形で物語が進んでいき、ページをめくるごとに、主人公のせつない思いや、希望、そしてその空間が美しい絵となって表現されています。

主人公の女の子は、いつも洋裁店のショーウィンドウに飾られている、アンティークミシンの存在が気になっていました。まだ動くのかしら? ただの飾り物? 日に日に思いは大きくなります。ある満月の夜、洋裁店の屋根裏の自分の部屋で過ごしていましたが、なかなか寝付けません。ミシンが自分を呼んでいるように思えて、そっと階下に降りていきました。自分の考えとは裏腹に、ひとりでに体が動いて、洋裁店の布を切り、アンティークミシンで、感性が赴くまま、お洋服を縫い上げてしまいました。

その次の月も、翌々月も、女の子は満月になると、ミシンに呼ばれて、個性的なお洋服を作ります。それが街中の噂を呼び、満月の翌日は、1点ものの新作を買おうと、お店は繁盛しました。しかし、誰もそのお洋服を女の子が作ったとは知りません。その都度、女の子は店主に「まだ見習いなのに!」と怒られ、ずっと見習いのままだったのです。そうして月日は流れ・・・。

女の子は、毎月、満月の夜、ミシンのうたを聞いていました。自分が行ったことも、見たこともない光景にミシンは連れて行ってくれました。それはきっと、女の子が知らずに秘めていた自分の才能をミシンが見せてくれていたのかもしれません。
そして何度目かの満月の夜がやって来たとき、女の子よりも、ずっと小さな女の子がやってきました。色違いのお洋服を来て、小さな女の子は「行こう!」と手を引っ張ります。主人公の女の子はその時、何を思ったでしょうか?

子どもは大人が考え付かないような感性をたくさん持っています。子どもの隠れた才能が、親や大人によって潰されてしまうこともありますね。
この絵本は、自分の才能を自分で見つけて、羽ばたくことの大切さ、そして自分の気持ちも大切にすることを気付かせてくれると思います。
子ども時代の思いを大切にした人が、ステキな大人になれることをお子さんに教えてあげられる一冊となるでしょう。

◆購入サイトはこちらから →ミシンのうた

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三輪桃加 について

兵庫県出身、東京都在住。お料理と絵本、明治~昭和初期のレトロな文化をこよなく愛す。自身の体調不良から毎日食べることの大切さを痛感し、大学で食物学(栄養学)を学び、シニア野菜ソムリエ(野菜ソムリエの最高峰)の資格を取得。 「真の"美"体質」をモットーにダイエットや食を通した健康・美容関連記事、食育絵本などを手掛けている。 ブログ:野菜&果物の美養栄養学