英語の苦手意識から生まれた

トトとムー おかしのまちへいく』を振り返って

トトとムー書影絵本制作のきっかけは、英語への苦手意識でした。
学生の時から英語恐怖症で、参考書を開いて単語を覚えるのが苦痛でした。
どうすれば単語を簡単に覚えられるのか・・・。
転機は留学先のイギリスでの生活。
ホームステイ先では5歳と2歳の子どもがいて、子どもたちとのコミュニケーションのために、時々絵本を読み聞かせしていました。
子どもたちに絵本を読んでいるうちに、苦手だった英単語を自然と覚えていることに気がつきました。
絵が可愛くて文章もシンプル、ページをめくるワクワク感も重なり、苦手意識のあった「言語の壁」が自然と崩れたのかもしれません。
その経験から、自分も幼い頃に素敵な絵本で英語を楽しく学べていたら・・・と思うようになりました。
この作品『トトとムー おかしのまちへいく』は私の「こんな絵本あったらいいな」を形にしたものです。

主人公は、帽子屋の主人でいつも冷静なトトと、ストライプ柄の帽子をかぶったお調子者の黒猫ムー。
「おかしのまち」の住人には、メガネをかけたネズミの老夫婦、鮮やかな赤と青の服を着たアヒル、腕をケガした双子のクマなど、個性的な動物たちが登場します。

絵本のストーリーは完成形になるまで、いくつも試作を書きました。
不思議な森に迷い込む話、帽子屋に来る風変わりな客の話など、今の絵本からは想像もつかないようなストーリーがいくつもありました。
決まっているのは絵本の中で英単語を使うということだけ。英単語と言っても、色、乗り物、数字、動物など様々なジャンルがあり、無数の選択肢が広がっていました。
どんな英単語を使おうか、どんな物語にしようかと悩んでいた時、ふと「子どもたちにとって身近なものは何だろう」と考えました。
今思うと、とてもシンプルな問いだったように思います。
子どもたちが絵本のページを開いた時に楽しくなるもの、嬉しくなるもの、自分が子どもの頃大好きだったもの、と考えた時にすぐに「おかしだ!」と思いました。そこから、「おかしのまち」が生まれました。

夢のような「おかしのまち」に住んでいる動物たちは、ポップで可愛く、色使いもカラフルにしたいと思いました。
原画は手描きなので、1枚描くのに時間がかかり、毎日夜遅くまで描いていました。すぐに納得のいく絵が出来るわけはなく、何度も描き直しました。
おかしのまちとその住人たちを想像しながら、自分も「トト」と「ムー」と一緒に旅をしているような気分で絵を描くのは本当に楽しかったです。
カラメルソースがたっぷりかかったプリン、まんまるドーナツ、イチゴがたくさんのったショートケーキなど、描いているとよくお腹がグゥ~と鳴っていました。
最後の1枚を描き終えた時は、感動すると同時にホッとしたのを覚えています。

出版して1年以上が経ちましたが、時々、本を購入してくださった方々から嬉しいメッセージや感想をいただくことがあります。
「おかしの絵を見ると、絵本から取って食べようとするんです」「ねずみさんがお気に入りです」「寝る前によく見ています」など、制作者としては何とも嬉しいお言葉です。

こうしてこの絵本を皆様に届けることができるのも、出版社や印刷会社の方々、絵本を置いてくださっている書店のご担当者様、その他制作に関わってくださった皆様のおかげです。本当にありがとうございました。

●購入サイトへはこちらをクリック → 『トトとムー おかしのまちへいく

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中村加菜子 について

(なかむら かなこ)大阪出身。神戸女学院大学を卒業した後、ロンドンへ留学。2013年に絵本シリーズ『トトとムー おかしのまちへいく』(ワークス)を出版する。現在はイラスト制作を中心に、チラシやパッケージデザイン、書籍挿絵、絵本制作などをしている。 HP:HELLO. 中村加菜子の世界