銀のかけら流れる川のほとり(4/5)

文・北森みお  

写本 -4銀のかけら流れる川のほとりそうして、何度目かの朝のこと。
川の向こう岸に目をやったとき、そこに、いつもの少年のすがたはありませんでした。

いない? いない。いないですって?

いつもの少年が、そこに、いないということ。
少女は、いったいそれをどう思っていいのか、どうしていいのかわからず、しばらくは星のかけらも拾わず、ぼんやりと向こう岸をながめていました。

――たとえばとても大切な人が自分のそばからいなくなること。その反対に、自分が大切な人のそばからいなくなること――

少女はここで星のかけらを拾う仕事をするずっとずっと昔、そんなことがあったことを思い出しました。
それは記憶の向こう側のはるかな国に、かすみのベールをかけてしまいこんでいたことでした。
少女は向こう岸に向かって、声を出してみました。
泣き声のような、叫び声のような、だれかを呼ぶ声のような、そんな声でした。
自分に声が出せることに、少女は、おどろきました。
でも、それもつかのま、気がつくと、いつのまにか腰をかがめて、いつものように星のかけらを拾っているのでした。

たとえ、向こう岸の少年はいなくなっても、陽が暮れて川面がすみれ色に染まり、バケツがいっぱいになるまで、少女は手を休めることはありませんでした。

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北森みお について

小説、童話、脚本など執筆。日本児童文芸家協会研究会員。 主な作品に『星夜行』(パロル舎/広島本大賞ノミネート)、『時の十字架』(鉱脈社/Qストーリー大賞優秀賞)、『ひろしまの妖怪』(中国新聞『おはなしばこ』掲載)、『北極星の夜』(『日本児童文学』掲載)、『深海魚のユメ』(国木田独歩記念事業文学祭入賞)、『T字橋の欄干」(広島市民文芸一席入賞)、『つばさ屋』(ラジオドラマ脚本)『星夜行-約束のリボン-』(ラジオドラマ脚本)など。 電子書籍に『美しいかけらの物語-ワニと薬指-』(ティアオ)、 『ホテルねこ堂』(星の砂文庫/童話と絵本コンテスト審査員特別賞) などがある。 近年作詞も手がけ、提供した楽曲に「風のソネット」「ロマンチカ」(作曲、歌はメロディストの田中ルミ子さん)などがある。