おにぎりと神様(7/8)

文・きゅりあ   絵・柊 京佳

「あれれ、あれ、あれ?」
おにぎり君がみると、自分の頭のてっぺんに、かわいい芽がひょっこりと顔を出しています。
おにぎりと神様7

「ああ~。やっと、顔を出せたよ!!」
かわいい芽のドングリは言いました。
「おにぎり君、ありがとう。神様のところへつれてきてくれて、おかげでうんと、大きくなれそうだよ」
おどろいて声が出ないおにぎり君に、さらに、神様がこう言いました。

「ほ、ほ~う。なるほど、なるほど、なるほどなあ~。これまた、すごいことになっておるぞ!!」
「え? またですか?」
「おまえ様の中で、別のタネたちの根っこが生えておるようじゃ。そら、そら、そら、もうすぐ、芽が出るぞい!!」
ニョキ!! ニョキ、ニョキ、ニョキ!!
今度は、おにぎり君の横のほうから、さらに、小さな小さな芽が出てきました。

「あれ、あれれれれ?」
どうやら今度は、花のタネが芽を出したようです。
「ああ。やっと、タネの中から出られたわ」
花のタネは言いました。
「おにぎり君、ありがとう。神様のところへつれてきてくれて。これで、お花をさかせそうだわ」

さすがの、おにぎり君も、あと、もう一つタネが残っていることはしっています。
キョロキョロと、自分の体を見て回ります。
すると、体のあちらこちらから、ニョ!ニョ!ニョ、ニョ、ニョ!!!と、さっきよりも、大きな芽が体中にいっぱいはえてきました。

「やあ~。やっと、神様に会えたんだね」
いっぱいの芽は、カキのタネたちでした。
「おにぎり君、ありがとう。神様のところへつれてきてくれて 。これで、おいしい実を作れそうだよ」

なんだか、おにぎり君は自分の体にいるみんなが幸せそうで、うれしくなってしまいました。
その時、神様が言いました。
「どうじゃ? おまえ様、このさい、おにぎりから、べつのものになる気はないかい?」
「べつのものですか?」
「わしのほこらを守ってくれる、山になってみてはどうじゃ? たくさんのタネたちもいることだ。きっと、みんなの山にもなれるであろう」
自分が大きなお山になる。
おにぎり君は、小さかった自分が大きな山になれるなんて、しかも、ずっと、神様のそばで風をよける役目につけるなんて、思ってもみませんでした。
おそなえ物だった自分が、この先もずっと、お山としてお役にたつことができる 。
なんて、すてきなことだろう。

きゅりあ について

福岡県生まれ。仕事の合間に詩や物語を書いています。 童話は優しくてほっこりするようなものを目指していますが、 まだまだ、文章は勉強中です。 いつか、イラストも勉強して、自分の描いた絵で童話を作りたいです。 blog では、詩と物語を載せています。 良かったら遊びに来てください。 blog:パンラ国物語と詩集の欠片たち

柊京佳 について

(ひいらぎ きょうか) もの心ついた時からお絵描き大好き!たくさんの絵本に囲まれて子育てする中で、実際の生活の中にもある素晴らしい物語をいっぱい発見!2015年からブログやトークライブでそれをお伝えしています。 ブログ:はぴゆるの森屋 虫や山や木との不思議なやりとり書いてます。