ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(1/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「よくわかりました。佐熊山策作さん。あの、ところで・・・」
「なんや?」
「もう、観察はよろしいのでしょうか?」
「観察?」
「先ほど、よーく見てみろ、とおっしゃいました」
「んっ? 覚えとらんがな・・・」
じいさん、佐熊山策作さんは、遠い目をして空を見上げる。

「さっき、あたしが佐熊山策作さんの前を通り過ぎようとした時、あたしを呼び止めて、」
「ふむふむ」
視線が、空を漂い始める。
「・・・あの、そこまでは、覚えてらっしゃいますか?」
「おぼろげに」
ですと!
はーっ。

「で、あたしが、あたしですか、と言うと、よーく見てみろ、と」
策作じいさんの、視線が、空から、あたしの顔に移動する。
瞳が、キランと輝きをます。
「ははーん。おまえ、キツツキ、なんや独り言の多いやっちゃわ、思うてたけど、わいを観察してたんか」
「はあ、ここにはそんな風習があるのかと」
「アホやな、おまえ」
「はああーっ???」
「そんなおかしな風習、あるわけないやろ! わいが、呼んだ時、この通りに、おまえ以外、だれかおったか?」
「いいえ」

呼ばれた時も、長々長々長々と名前の説明されてる間も、だれもいなかった。
こんな時に白状するのもなんだけど、あたしは、勘違いしちゃうことが、激しく多い。
あたしは、やっと、理解した。
最初から、こう言えばよかったんだ。
「はい、なにか御用でしょうか?」

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。