ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(14/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

舟に乗った人たちも、舟を見送る人たちも、ぼんやりとしていて見えない。
もともと、視力は、いいほうじゃない。
しかし、こんな急激に、悪くなるのか?
目をこすって、気がついた。
あたし、涙を流してる。
涙って、うえええーんと声張り上げて泣いた時に、流れるもんだと思ってた。
そうじゃない時も、流れるんだ・・・。
手の甲で涙を拭い、賢作さんの顔、もう一度、見たいと目を凝らしたがかなわなかった。
舟は、遠くなっていた。

夕日に向かい、舟が、行く。
西へ、西へ、彼の岸へ。
夕日が、落ちる。
赤く染まった海を舟が行く。
西へ、西へ、彼の岸へ。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。