ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(6/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

続く言葉は、「あの世には持っていけない」、だろうか? ちょっとしんみりしてしまう。
「ありがとうございます」
「ほな、さいなら」
「さようなら・・・」
去りかけるじいさんに心の中で呼びかける。
あたし、『魂送り』、しっかりしますから。
おじいさんの魂、お見送りしますから。

「せや、まだ、あのアメあるか?」
「はい、どうぞ」
自転車屋のじいさんは、差し出した袋の中から、ごっそりと掴み出した塩アメをポケットに詰め込むと、去って行った。
なにも、そこまで、持っていかなくても!
しんみりが消えてゆき、入れかわるように、疑問が湧き上がる。
それにしても・・・。

もうすでに死んでいるのに熱中症で死にかけて、水と塩アメでよみがえり、おかげで生き返ったとヒスイを進呈してくれるなんて、なんて、リアルに存在してるんだ!

それって、おかしいよね?
おかしくないか?
ユーレイなのに、食べる、飲む、ヒスイを探すなんてこと、平気でしちゃってるなんて。

生者か死者か、区別つかん程、普通におる。
それが、盆の、花盛り町大字細八字猪甲乙。
策作じいさんの言葉が、よみがえり、
『事実は小説よりも奇なり』って言葉が頭をよぎった。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。