ハトのオイボレ、最後の冒険(3/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

「調べてくるだって。ネコのあいつが、ハトの私のために?」
一体全体、どうやって調べるというのでしょう。
それに、チェシャの親切な理由が、いまひとつ、ピンときません。
でも、「たぶん、3回も生まれ変わっていれば、それなりに、不思議な力が身につくし、考え方だって、ふつうのネコとはちがってくるのかもしれない」と、ぼんやり、納得しました。

いずれにしても、ネコが消えて、ハトはほっとしました。
急に、どっと、疲れが出て、ハトはその場にうずくまりました。
そして、首を後ろに曲げ、くちばしを背中の羽に、すっぽり、うずめて、「やっぱり、食べられなくてよかったな・・・」と思いながら、目をつぶりました。

その晩、ハトはたくさんの夢を見ました。夢の中で、ネコになって、ネズミを捕まえたり、おっかないけものに追われたり、包帯でぐるぐる巻きにされて、ミイラになったりしたのでした。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに