ユーモアとやさしさがいっぱい

りんごがひとつ書影りんごがひとつ
ふくだすぐる 作・絵
岩崎書店

犬やねこのみならず、ウサギ、シカ、ロバ、キリン、ライオンなどが大好きな私。今さらながら、職業の選択を間違ったと後悔することもしばしば。
この年になっても、マンションのベランダで「シカを飼いたい」「ミニブタを飼いたい」と言いだし、家族を困らせるほど私の動物好きは半端ではない。
そんな私が、書店で1ページ目を開いて即買いしたのが、本書だ。冒頭から動物がわんさか登場するからだ。

森にりんごが落ちている。動物たちはおなかをすかしていて、みんなは、そのリンゴを食べようとねらっている。
ところが、いっぴきのサルが、そのリンゴを取って逃げるのだ。
動物たちが必死に追うその表情が楽しい。木から木へ、川を渡り、がけを駆け上り・・・。
たったひとつのりんごをうばいとるために、笑いが出るほどみんな必死。そしてみんながサルを追い詰めたのだが・・・。
その展開に読者はどう思うだろうか。

世の中にはいろんなトラブルが起こり、行き違いで感情が激昂してしまうことがある。家族の間でも、大人の人間関係や仕事においても。
でもトラブルや行き違いには、必ず事情や原因があるものなのだ。それをよく見ず、分ろうとせずに、感情に走ってしまってはいけない。そのような大切なことを大人にも教えてくれる作品なのである。