ラーメン無料 早いもの勝ち(3/5)

文と絵・夏美

しばらくすると犬が出てきた。満腹で幸せそうな顔してやがる。
犬はずっとゆっくり歩いていたので、見失うことなく後をつけることができた。
首輪をつけているし、野良犬ではないはずだ。
勝手に抜け出してラーメンを食べに行ったいるということか。
飼い主がチラシを犬にやるはずないと思うし、きっと黙って持ちだしているにちがいない。

そして犬がようやく、一軒の家の前で立ち止まり、閉まっている門の下をグリンとくぐった。
ぼくは走っていって門のさくの間から中をのぞきこんだ。
犬が自分の犬小屋の前で「ずっとここにいました」というフリをして座っている。
ぼくがじっと見ているのに気づき、「おっ」と一声あげておどろいた表情をした。

家の人に言いつけてやろうかと思ったが、ぼくはふと、おかしなことに気がついた。
ここは一丁目ではない。もう二丁目に入っている。
ラーメン屋のおじさんは一丁目にしかチラシを配っていないと言っていた。
この家にはチラシは配られていないはずなのだ。では犬はどこでチラシを手に入れているのか。
「どうしてもつきとめてやる」と決意した。

夏美 について

大阪出身。童話やミステリーが好きで、少年探偵団や少女探偵ナンシーで育ちました。自分もそんな感じの、子供がワクワクできるようなミステリーやサスペンスを書けたらいいなあと思っています。ようやく落ち着いてパソコンに向えるようになった主婦です。尊敬する人はグラン・マ・モーゼスです。