君ならどうする?

みつばち書影みつばち
丘 修三 作
片岡まみこ 画
くもん出版

四つの短編で紡がれた本書では、それぞれの主人公に、ある日、いつもとちょっと違った出来事が起こる。
さあ、君ならどうする?――そんな作者の声が聞こえそうな物語だ。
本書は、「だるま」「手紙」「ひったくり」「みつばち」の四つの物語で構成されている。それぞれの主人公は、道夫、研之介、ぼく、春子と、どこにでもいそうな子どもたちだ。
彼らは、遭遇した出来事の中で、どう考え、決断し、成長していくだろうか。

「だるま」の道夫は、ひねくれもの(異質なタイプ)にみえる和男と、再びクラスメートになることで、彼を知っていく。
人は、異なるものに対して警戒心を抱く。その不安が、いじめや偏見へとつながる。
この「だるま」は、「何か変→変は怖い」という、不安による攻撃の解消方法を、じんわりとした切なさにのせて教えてくれた。

「手紙」は、同姓同名のために誤配された手紙を受け取った矢野研之介が、もう一人の矢野研之介に会いに行こうと決めることから展開していく物語だ。手紙はロマンの宝庫だと思っている私には、アイテム、展開など、随所に宝物がちりばめられた物語だった。
もし私に同じような誤配があったら・・・と、私も、研之介のように、空想の世界をさまよってしまった。

「ひったくり」は、カツアゲをされたぼくとこうちゃんが、仕返しにひったくりをしてしまう物語だ。
悔しさのままにおばあさんのバックをひったくってしまった二人は、どうするのか!
二人の心の動きとまわりの大人の思い。それぞれが絡み合う中で、悪の連鎖が善の連鎖へと変化していく。その過程が見事に描かれ、心が温かくなった。

最後の「みつばち」は、五軒区画の新興住宅地に住んでいる春子の家に、ある日、百万円が投げ込まれるという出来事からはじまる。お金が投げ込まれた家、お金が投げ込まれなかった家。善意と不審に、心が試される。
春子と真理、ミズキのゆれる心が丁寧に描かれ、ラストには、ほうっと息をついた。

どのお話も、主人公たちの成長がみられ、子どもが、心でキャッチできるような物語となって描かれている。
だが、ここに描かれているテーマは、どれも、私たち大人にも鋭い問題を突きつける。
こんな時、あなたならどうする?

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満月 詩子 について

(みつき うたこ) 佐賀県生まれ、在住。学校図書館勤務を経て、福祉関係の仕事に就く。現在は、仕事以外に、ボランティア活動なども行いながら、絵本や児童書の創作を続けている。日本児童ペンクラブ、日本児童文芸家協会会員。 2012年、『その先の青空』で、第15回つばさ賞、佳作に入選 おもな著作に、『さよなら、ぼくのひみつ』【『さよなら、ぼくのひみつ』(国土社)に収録】。『たまごになっちゃった?!』【佐賀県DV総合対策センター発行】、『あかいはな」』【『虹の糸でんわ』(銀の鈴社)に収録】などがある。