四郎とオレ(6/7)

文・中村文人  

電話取り外し四郎がとりはずされてからというもの、オレの元気はしぼんでしまった。
佐藤くんも同じ。塾でオレたちはため息ばかりついていた。
それから一週間が経った。和田さんから、会社にきてほしいと連絡があった。
「きっと四郎をとりはずしたいいわけでもするつもりなんやろ。いまごろおそいわ」

その日の夕方、学校の帰りに和田さんをたずねると、受付の人が案内してくれた。
「こちらで和田がおまちしております。どうぞ」
きれいなおねえさんが、ていねいにおじぎをした。この前とずいぶんあつかいがちがう。
ドアが開くと、そこは大きな部屋だった。まん中に立派なソファーがあり、本だなには、むつかしそうな本がぎっしり並んでいる。
ソファーの向こうに、また立派な机があって、なんと和田さんがすわっている。
「和田さん、ひどいわ。四郎のことなんとかするって、約束したやないか!」
オレは思わずどなった。
「そのことについて、幸平くんにお話をしようと思いまして」
「いいわけをしたってあかんで。みんなおこってるんや」
「とにかくお話を聞いてください。幸平くん」
和田さんは立ち上がった。
「だいたいな、和田さん、そんなとこにすわって、えらそうになにしとるんや。社長にみつかったら、おこられるで」
「あのぅ、和田が、当社の社長なのですが」
おねえさんが小さな声で教えてくれた。
「えっ! しゃ、しゃちょう? 和田さんが、この、会社の、社長!?」
オレは腰がぬけて、ソファーにすわりこんだ。
「失礼しました。社長の和田でございます」
「あーびっくりした。社長ならそうと、はよう教えてえな」
オレは汗をぬぐった。
「すみません、いいそびれてしまって」
「心ぞうが止まるかと思うたで」
「点検係のときとちがって社長になってしまってからは、四郎とは会えなくなって。ずっと気になっていたのですよ」
和田さんはソファーにすわった。
「でも四郎をとりはずしてしまったやないですか。この会社にとって、お金をかせげない電話は用なしなんや」
オレは口をとがらせた。
「幸平くん、そうおっしゃらずに、私の話を聞いていただけませんか」
和田さんは書類をオレの前に広げた。