岩石劇場のロビン・フッド

◆自然の劇場の楽しさ
前回、ミヒャエル・エンデの「モモ」が学校で上演され、現代にあわせた解釈が一部でなされていた、ということを書きましたが、岩石劇場の演劇では、基本的に原作に忠実だったと思います。しかし、毎回感心したのは、舞台の使い方でした。

通常、劇場は長方体の何もない真っ黒な空間が想定され、ゼロから照明や舞台セットをしつらえていく発想です。ところがこの劇場は巨大岩石を利用して作られている。日本文化が得意とする創造力からいえば、対象物を何かになぞらえていく「見立て」がとても大切になってくる空間です。そういう創造性の対比から考えると、ドイツではかなり挑戦を要する空間かもしれません。

しかし、この岩石劇場、ピッピやロビン・フッドたちが縦横無尽に活躍する場所として、ぴったりでした。たとえば敵に追われるロビン・フッドは舞台袖へ消えたかと思えば、巨大岩石のてっぺんから現れ、「へへーこっちだぜ」なんていうシーンは、大人も子供もあっと驚く。

高松平藏 について

(たかまつ へいぞう) ドイツ在住ジャーナリスト。取材分野は文化・芸術、経済、スポーツ、環境問題など多岐にわたるが、いずれも住まいしているエアランゲン市および周辺地域で取材。日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。一時帰国の際には大学、自治体などを対象に講演活動を行っている。 著書に『エコライフ ドイツと日本どう違う』(化学同人/妻・アンドレアとの共著 2003年)、『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか』(学芸出版 2008年)のほかに、市内幼稚園のダンスプロジェクトを1年にわたり撮影した写真集「AUF-TAKT IM TAKT KON-TAKT」(2010年)がある。1969年、奈良県生まれ。 HP;インターローカルジャーナル