正直な王様ハンス(2/3)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

「なんで、そうなるだかなあ」
ハンスが、くせ毛のもじゃもじゃ頭を、ボリボリ、かいたので、アウロラは、ケラケラと笑いました。でも、すぐに、まじめな声になって言いました。
「なぜって、土地と家族を何より大事にするおまえなら、国と人々を大切にすると思ったからです」
ハンスはアウロラの言ったことを、じっと、考えているようすでした。それから、
「ようがす。畑を耕すことと、家族を大切にすることが、王さまの仕事と同じなら、おらにもできそうだ。お引き受けしますだ」
と、答えました。
それから、耳のつけねまで真っ赤になって、
「それに、あんたさんは、これまでおらが見たどんな娘っこよりべっぴんでがす。女房にするに不足はねえだよ」
と、つけくわえました

「よし、決まりじゃ!」
さっそく、結婚式のために、教会から大僧正が引っ張ってこられました。
母親似の美しいアウロラと、まだ野良着のままの農夫の息子ハンス。ちぐはぐな結婚式でしたが、仲良く並んだ若いふたりは、とても幸せそうに見えました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに