正直な王様ハンス(2/3)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

ハンスは、アウロラが飛び去った窓を見上げました。
高い空に、ちぎれ雲が吹き飛んでいきます。
ハンスはさびしい気持ちでいっぱいになりました。
(だけんど、ひとりぼっちで旅しなくちゃならねえ王女さまは、おらより、もっと、さびしいに違いねえ・・・)
ハンスは決心しました。
「ああ、わかったよ。おら、王女さまの帰りを待って、留守をちゃんと守るだよ。だけんど、いったい、いつ、王女さまは帰ってくるだね」
すると、魔女は、どこからか、1本の苗木を取り出しました。
「これを庭にお植え。長旅をしているうちに、あの娘は帰る場所を忘れてしまうだろう。その時、これが目印になるからね」

苗木をハンスの前に置くと、魔女は風に姿を変えて、ひゅうっと、窓から出て行きました。
とたんに、人々をしばっていた魔法が解けました。ハンスは、あわてて、風を追いかけて、
「いったい、それはいつだね」
と、叫びました。
「その木に花が咲いた時に・・・」
と、かすかな答えが返ってきました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに