水のお城(3/6)

文・伊藤由美  

3 水のお城

「上出来です」
リムニーは、水晶玉を持ち帰ったディドーに、満足そうにほほえんで、言いました。
「それを高く放りなさい」
言われるままに、王子は、湖に向かって、水晶玉を、力いっぱい、放り投げました。

水晶玉が、ボチャンと、落ちると、はげしいうずがまき起こり、水面が大きくふくれ上がって、水が、どんどん、あふれ出しました。
森を飲みこみ、湖は何十倍にも広がっていきます。
そして、その水底から、たとえようもなく立派なお城が立ち上がったではありませんか!

白い城壁。いくつもの塔。美しい天守。
その天守のてっぺんにかがやいていたのは、あの水晶玉!
「これから先、あなたをたおせる者は、だれ一人、おりません。天守にあの水晶玉があるかぎり」
リムニーは、あっけにとられている王子を、お城の中へとまねき入れました。
どの部屋も、どの蔵も、金銀財宝でいっぱいです!

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに