猫アンテナ狂想曲(11/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「そうだ! 暗視スコープゴーグルを使いましょう!」
昨夜、北陸地方に大雪をもたらした寒気団は去り、今、雪はやんでいる。
キーンと澄んだ夜空から、星々が凍てつく光を地上に放つ零下の世界で、オレと猿神さんは、暗視スコープゴーグルを装着し、黒岩さんは大ぶりの懐中電灯を手に家の周りをくまなく捜した。
塀の外にも出てみた。

深夜の道には、だれもいない・・・、んっ、いや、いるんだ出歩く人が。
コンビニの方向に走る人影をながめていると、その人は、派手に転んだ。
「大丈夫ですか?」
声をかけると、微笑んで、OKサインをしてみせる。
とてもきれいな女の人だ。
「あの、この辺で、猫を見かけませんでしたか? 小さくて黒い猫です」
その人は、小さく首をふり、去っていった。

捜しても、捜しても、チャッピーの姿は、見当たらなかった。
「クッシャン」オレの鼻から鼻水が、
「チャッピー」猿神さんの目から涙が、
「腹減ったな」黒岩さんの腹から虫の声が、
垂れて、流れて、聞こえても、東の空は、太陽を隠したままだ。

「夜明けは、まだかなックション、クション」
「冬の夜は長いからな」
黒岩さんは言い、
「先輩、いったん家に入って体を温めましょう」
猿神さんの肩に手をかけた。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。