猫アンテナ狂想曲(12/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「さあ、みんなで雪かきだ。ガレージから道に出るまで、キャロちゃんが通れるように」
玄関口に立てかけてあるスコップをつかみ、ガレージへと向かう。
雪に閉ざされたガレージの、扉を開けるために、雪をかく。
雪の隙間から手を入れて、重い扉を引き上げると、見なれない白い車が、中央にあった。

「軽自動車なんだ。かなりぼろっちい。これで出かけて、大丈夫か?」
つぶやくオレに、
「マツダのキャロルだ。大丈夫かどうかは、僕にはわからん。が、無事は祈ってやるよ」
黒岩さんはささやいて、
「先輩、僕は、新聞社と不動産屋をあたったらすぐに合流します」
背を向ける。

テキパキと動く黒岩さんて、頼りになるなと思った矢先、黒岩さんがふり返る。
「あっ、そうだった。先輩の携帯は使えないんでしたね。なら、アキラくん、君の携帯番号は?」
「オレ、家に忘れてきたようです」
「だったら、これで連絡を取り合おう。僕は会社用のがあるから」
黒岩さんは、金色の携帯を渡してくれた。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。