猫アンテナ狂想曲(14/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

話によると、昨日からの一連の出来事は、父さんが策を弄したものだった。
それで、確認のために使われたのが、チャッピーだという。

チャッピーは、みあん食品のキャットフード開発部門で飼育されていた実験猫だったんだ。
「JKN1031、通称JKの首輪に小型の発信機を仕込み、適当な場所に放った。同時に、福玉新聞の情報コーナーに掲載を依頼した。もちろん、おまえの趣味を把握した上で、だがね」

「オレの趣味って、猫捜しのことを?」
「優秀な探偵に頼めば、すぐにわかる」
探偵に頼むなんて、ひどいじゃないかと怒りを口にする暇もなく、
「ちなみに、ワタクシがその優秀な探偵、冬野ソナと申します。ご自宅に入る新聞の種類を把握するほか、アキラさんがいらっしゃる場所にさりげなく猫捜しの新聞を配置いたしました」
あの女性が頭を下げる。

適当な場所に放されたチャッピーは、さまよい、自分で居場所を定めたようだ。
一瞬にして、猫嫌いの猿神さんのハートを射止め、猿神家の猫として迎えら
れた。
そして、そこに、チャッピーを捜しにオレがやって来たってわけだ。

「アキラ、おまえに、あの能力が、まだ残っていることは確認できた」
「それなら、なぜ、チャッピーを勝川市のみあん食品まで連れていったのですか?」
「私は、今、みあんの勝川研究所にいるんだ。JKは研究所で生まれ育った猫だ。外の世界に出したからには、きちんと健康診断をしてやらなければならないからね」

「その前に、オレの体も調べたってわけだ」
「ああ、調べさせてもらったよ。体に影響が発生していないか、心配だったんだ」
「だから、採血を・・・」
オレの体を心配するが故だと聞けば、百歩譲って許してもいい。

「でも、缶コーヒーに睡眠薬を仕込み、眠らせておいて血を抜くなんて、卑怯です。猿神さんまで巻き添えにして・・・」
が、これは、巻き添えは、許せない。
「なんだって? ちょっと待ちなさい。・・・こちらとしては、睡眠薬を仕込むだの、血を抜くだの、そんな手荒な手段は用いていないが。そんな目に遭っているのか?」

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。