猫アンテナ狂想曲(9/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコ

「黒岩、ラブちゃんと一緒じゃないのか?」
「先輩、お願いですから、僕の車にその呼び方は止めてください」
と懇願しつつ、
「RAV4はそこのコンビニの駐車場に止めてきました。ここの前の道は、雪で一車線しか空いてないですからね」

「黒岩、家の鍵、ぶっ壊したんじゃないだろうな? まだ、ワシの講義、全部聴いてないだろうが」
「壊してないですって。ちゃんと先輩のレクチャー通り、チャカチャカと開けましたから」
「黒岩、おまえ、履物はどうした。玄関になかったぞ」
「コンビニから歩いて来るうちに、長靴に雪が入って、中がびしょびしょになったので、早く乾くよう、ガスコンロで中をあぶって、ほら、そこに」
猿神さんが立て続けに発する質問に、黒岩さんが、律儀に答えていく。

玄関の鍵が開いていたのも、靴がないのも、ぜんぜん謎ではなかった、ってことだ。
なるほど、と聞いているうちに、
「黒岩、おまえ、栗ぜんざいと白玉ぜんざい、どっちが好きだ?」
猿神さんの発する質問は、どんどん的外れなものになってきた。
中園さんの件に、ふれさせないようにしていることは、火を見るよりも明らかだ。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。