真夏の宮殿庭園で朗読を

◆文学がまちへ出てきた
このフェスティバルには作家・著述者など毎年80名ほど招聘されます。もちろんこの中には絵本・子供向け作品の作家たちも含まれます。

このように書くと、さぞかしエアランゲン市は大きな都市なのだろうと思われる読者諸氏もおられるかもしれないでしょう。しかし、わずか10万人。ドイツの都市は相対的に規模が小さく、音楽祭で有名なバイロイトでも7万2000人ほどの人口規模です。その上、まちの中心地といえば、お店やカフェ、レストランはもちろん、ギャラリーや図書館、広場や公園があります。だから普段から高齢者もカフェで楽しんでいるし、若者は「まちのどこそこで会おうぜ」と待ち合わせの場所にする。夫婦がベビーカーを押して来ることもできる。そんな場所なのです。

「朗読係」の声に耳を傾ける

「朗読係」の声に耳を傾ける

このような空間で行われる文学フェスティバル。メイン会場の宮殿庭園のみならず、市街地全体は拡声器で音楽が流れてきたりするわけでもなく、それでいてフェスティバル特有のわくわくした雰囲気もあります。「書を捨てよ 町へ出よう」ではなく、書がそのまま町へ出てきたかたちですね。このフェスティバルは今年で36回目。作家の朗読に耳を傾けている大人の中には、子供のときにも、ここで童話の朗読を聞いていた。そんな人もいるかもしれません。

筆者のHP:インターローカルジャーナル
筆者の新著についてはこちらから →高松平藏さんの新刊が発売となりました!

高松平藏 について

(たかまつ へいぞう) ドイツ在住ジャーナリスト。取材分野は文化・芸術、経済、スポーツ、環境問題など多岐にわたるが、いずれも住まいしているエアランゲン市および周辺地域で取材。日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。一時帰国の際には大学、自治体などを対象に講演活動を行っている。 著書に『エコライフ ドイツと日本どう違う』(化学同人/妻・アンドレアとの共著 2003年)、『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか』(学芸出版 2008年)のほかに、市内幼稚園のダンスプロジェクトを1年にわたり撮影した写真集「AUF-TAKT IM TAKT KON-TAKT」(2010年)がある。1969年、奈良県生まれ。 HP;インターローカルジャーナル