食育絵本ではないのに、食育にも向く本!

そらのたべかたおしえましょう書影そらのたべかたおしえましょう
はたよしこ 作・絵
すずき出版

私は子どもの頃「自分では普通」だと思っていましたが、振り返ってみると、かなり風変りな子どもだったと思います。

浪花節が好きな祖父の影響で、幼年の頃から節を覚えて歌ったり、一日中へやにこもって本を読んだり、空を眺めて空想をするのが好きでした。一人でいてもちっとも寂しいと思わないし、好きなことにはトコトン熱中する変り者だったような気がします。(カミングアウトすると、いつも祖父と言っている人は本当は父親で、当時同級生の父親とあまりに年齢差があるので、ついおじいちゃんと嘘をついていました)

この絵本と出会ったとき、自分のことは棚にあげて、これはきっと、変り者の作者が描いたに違いない、と確信しました。それほどインパクトのある表紙だったのです。
画面いっぱいに描かれた奇抜な絵の表紙をみただけで、スッと手にした不思議な絵本でした。

ほっぺを真っ赤にしたゲジゲジまゆ毛の子どもが、空に向かっておおきな口をあけています。
何というタイトル、何という奇抜な絵! きっと楽しい絵本に違いない!
期待に胸を膨らませてページをめくると、まさに!

すいかのたべかたおしえましょう。
まっかなすいかをすぱっときって、
おおきなくちでかぶりつき、
ほらほらしるがたれてます。
おかまいなしに、しゃくしゃくしゃく。

とうもろこしのたべかたおしえましょう。
まえばでばりばりけずります。
まるでにんげんぶるどーざー。

とまとのたべかたおしえましょう。
とまとはまるごとまるかじり。
のこすとこなどありません。

食べ方を教えてくれるものはまだまだあります。枝豆、水や風、歌や虹だって食べ方があるのです。
そして、ついに、ついに空の食べ方が!
太陽も雲も全部食べたら、いったいからだはどうなるのでしょう。
その食べ方のとおりにまねしてみると、
楽しくて、元気がでて、生きる力がみなぎって、踊りたくなってしまいます。

色彩豊かな画面で、主人公は女の子か男の子かわからないくらい勢いがよくて、次のページを早くめくりたい、つぎには何をたべるのかな?と、わくわくする絵本です。
偏食の子も少食の子も、きっと「わあ、いろいろ食べてみたいな」と思うことでしょう。

野菜だってなんだって、こんなふうにして食べれば楽しい!と思わせてくれるのです。
丘の上に並んで立って、クラス全員で、あるいは親子で、あるいは友だちどうしで、きっと空を食べたくなります。食育にも取り入れられる、楽しい絵本です。

購入サイトはこちらから →そらのたべかたおしえましょう

季巳明代(きみ あきよ) について

鹿児島県出水市在住 保育士時代に公募にはまり、幼年童話作家をめざす。 毎日童話新人賞優秀賞、新美南吉童話賞特別賞、など受賞多数。 作品に『てんぷら母ちゃん』(家族っていいね3・4年生収録/日本児童文芸家協会編/PHP研究所)』 『ウドちゃんとチョロくん』(ぼくたちの勇気)収録/編著/漆原智良/国土社)』 『よっていっきゃんせ!』(児童文芸収録/日本児童文芸家協会編)』 単著に『ひげなしネコ』『じゅんばんこ!』『四年変組』『りほちゃんのめざし』(以上フレーベル館)、『ひっこしはバスにのって』(銀の鈴社)。キンダーブック2に、『にんにんにんじゃえん どろろんぐみ』を連載中。(いずれもフレーベル館