WEB版『BOOK&another story』(2/5)

文・田村理江   絵・小野寺美樹

なんとか家にしのびこみ、内緒で妹と再会したコールフィールドは、「兄さんは何になりたいの?」と真剣に問われ、思わず「ライ麦畑のキャッチャー」と答えた。それはロバート・バーンズの詩に出てくる一節で、畑の崖から落ちていく子どもたちをキャッチして救いたい、という意味なのだ。

妹は兄を理解し、兄の家出に「ついて行く」と言い張る。困り果てたコールフィールドは、動物園に入り、雨の中、回転木馬に妹を乗せる。
回り続ける妹に「おうちへ帰るよ」と、初めて嘘のない言葉をかけ、えも言われぬ幸福感に浸ったことを、コールフィールドはいつまでも記憶する。

若者のバイブルとして、今も読み継がれる名作だが、発売当時はカリフォルニア州の教育委員会から悪書の認定を受け、学校の図書室から追放された。
1980年のジョン・レノン射殺の犯人が、警察につかまるまでの時間、歩道に座りこんで、この本を読んでいたエピソードも有名だ。

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田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ

小野寺美樹 について

(おのでら みき)1995年千葉県生まれ。学習院大学経済学部経済学科を2017年の春卒業して、出版社勤務予定。2012年春から毎年、『BOOK展』(ギャラリーウシン)に絵画作品やポストカードを出品。