WEB版『BOOK&another story』(3/5)

文・田村理江   絵・小野寺美樹

穏やかな毎日が過ぎるモモの町に、最近、灰色の帽子に灰色の服、灰色の書類かばん、灰色の葉巻をふかした男たちが出没するようになった。
彼らは「時間貯蔵銀行のセールスマン」と名乗り、町の人たちに「時間の預け入れ」を持ち掛けた。灰色の男たちの口車に乗った町の人たちは、言われるがままに時間を預け、そのために毎日が忙しく、イライラしたものに変っていった。

町自体も見る見る、合理的で無機質で味気ないものになっていった。この異常事態に気づいたモモは、「時間が盗まれている! 取り戻さなきゃ!」と、ベッポやジジや子どもたちと一緒に立ち上がる。

ところが、灰色の男たちも負けてはいない。モモをつかまえようと計画を練る。ベッポもジジも子どもたちも灰色の男たちの手に落ち、モモの味方が誰もいなくなる。

そこに現れたのが、甲羅に文字を浮かべる不思議なカメ。モモはカメに導かれ、時間を司るマイスター・ホラの家へと招かれる。ホラと協力して、モモはたった一人で、灰色の男たちと戦い、最後には、みんなの時間を無事に取り戻す。

ファンタジーの名作『モモ』は、1986年に映画化、エンデ自身も出演している。(1973年 ドイツで刊行)

田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ

小野寺美樹 について

(おのでら みき)1995年千葉県生まれ。学習院大学卒業後、武蔵野美術大学造形学部に編入。2012年春から毎年、『BOOK展』(ギャラリーウシン)に絵画作品やポストカードを出品。